株におけるMACDとヒストグラムの見方・使い方!おすすめ設定やアプリも紹介
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目次
MACDはトレンドと過熱感を分析できるインジケーター
上の画像では、ソニーグループ(6758)の日足の株価チャートにMACD(マックディー)を表示しています。
見ての通り、MACDは2本のラインとヒストグラムからなるインジケーターです。
MACDの正式名称は「Moving Average Convergence Divergence(移動平均収束発散法)」で、長短2本の移動平均線の収束(近づくこと)と発散(離れること)に注目する形で開発されました。
移動平均線はトレンドを捉えるために使用される、いわゆるトレンド系インジケーターですが、反応が遅れるという弱点があります。
MACDはこの移動平均線の弱点を改善する形で進化しており、トレンドを素早く捉えられるのが大きな特徴です。
また、トレンドを捉えるだけでなく、相場の過熱感を読み取るオシレーター系インジケーターとしての性質も持っており、使い道が幅広いところもあります。
今回は、株価を分析する上で使い勝手の良いMACDについて、全体像が分かるように丁寧に見ていきましょう。
MACDを構成する各要素の計算式と意味
上の画像で示しているように、MACDは「MACD線」「シグナル線」「ヒストグラム」という3つの要素で構成されます。
それぞれの値を算出する計算式は以下の通りです。
MACD線 = 短期EMA(X期間) – 長期EMA(Y期間)
シグナル線 = MACD線のEMA(Z期間)
ヒストグラム = MACD線 – シグナル線
X/Y/Z:パラメータ、EMA:指数平滑移動平均
簡単にそれぞれの意味合いを解説すると、MACD線は長短2本のEMAというタイプの移動平均線の値幅を示しています。
このMACD線のEMAがシグナル線で、MACD線とシグナル線の値幅を示しているのがヒストグラムです。
このようにMACDの計算には短期EMA・長期EMA・シグナル線という3本のEMAが出てきますが、それぞれの期間はパラメータとして調整することができます。
一般的によく使われるパラメータ設定は以下の組み合わせです。
短期EMA | 長期EMA | シグナル線 |
12 | 26 | 9 |
チャートツールのデフォルト値もこのように設定されている場合がほとんどで、最初はこの組み合わせを使用するのが無難でしょう。
ただし、必ずしもこれがベストというわけでもないため、バックテストで検証をした上でパラメータ設定を調整しても問題ありません。
MACDの見方・使い方を株価チャートで解説
MACDにはさまざまな見方、使い方がありますが、ここでは基本となる以下の3つを紹介します。
- MACD線とゼロラインのクロス
- ゴールデンクロスとデッドクロス
- ダイバージェンス
では、それぞれについて、株価チャートを使いながら解説を行っています。
MACD線とゼロラインのクロスはトレンド発生のサイン
上の画像は、オリックス(8591)の日足の株価チャートにMACDを表示し、MACD線がゼロラインとクロスしたところを白丸で示しています。
このサインの条件を整理すると以下のようになります。
- MACD線がゼロラインを下から上に追い抜くと買い
- MACD線がゼロラインを上から下に追い抜くと売り
上の画像の「売り」の後に株価は下落が続く形、「買い」の後に株価は上昇が続く形となっており、このサインが有効に機能していることが分かります。
このサインについて補足すると、MACD線がゼロラインとクロスするということは、MACD線の値がゼロとなり、プラスとマイナスが入れ替わるということです。
MACD線の値がゼロというのは「短期EMA = 長期EMA」の状態であり、MACD線とゼロラインがクロスするときは短期EMAと長期EMAもクロス(EMAのゴールデンクロス・デッドクロス)していることになります。
移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスはトレンド発生のサインとして有名ですが、実はMACD線とゼロラインのクロスはこれと同じ意味を持っているわけです。
なお、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスが分からない場合は、以下の記事で確認していただければと思います。
ゴールデンクロスとデッドクロスはトレンドの発生をより早く捉えられる
MACDで最も定番のサインはゴールデンクロスとデッドクロスです。
上の画像は先ほどと同じ株価チャートですが、MACDのゴールデンクロス・デッドクロスが発生したところを白丸で示しています。
このMACDのゴールデンクロス・デッドクロスの具体的な条件は、以下の通りです。
- ゼロラインよりも下で、MACD線がシグナル線を下から上に追い抜くと買い(ゴールデンクロス)
- ゼロラインよりも上で、MACD線がシグナル線を上から下に追い抜くと売り(デッドグロス)
上の画像を見てみると、株価の下落トレンドの序盤で「売り」、株価の上昇トレンドの序盤で「買い」となっており、このサインが有効に機能していることが分かります。
このサインについて補足すると、例えばゴールデンクロスであれば、MACD線のEMAであるシグナル線をMACD線が下から上に追い抜くと、MACD線が上に伸びやすいと考えます。
ゼロラインよりも下でこれが起こると、MACD線が上に伸びてそのままゼロラインとのクロスも起こることが予測されるというイメージです。
このMACDのゴールデンクロス・デッドクロスは、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスと同じ意味を持つMACD線とゼロラインのクロスよりも先に起こります。
すなわち、MACDを使うことで、株価のトレンドの発生をより早く捉えることができるということです。
同じ株価チャートですが、MACDのゴールデンクロス・デッドクロスが発生するタイミングは、MACD線のゼロラインのクロスが発生するタイミングより少し早くなっているので、両者を見比べて確認してみてくださいね。
ダイバージェンスはトレンド転換の兆候をあらわす
上の画像は、楽天グループ(4755)の日足の株価チャートにMACDを表示し、ダイバージェンスが発生したところを白矢印で示しています。
ダイバージェンスとは、株価が上昇・下落しているのにMACDが下落・上昇しているという形で、株価とMACDの間で起こる逆行現象のことです。
これはオシレーター系インジケーターにおける定番のサインで、トレンド転換の兆候を示唆するものとして捉えられます。
実際に上の画像においても、株価が高値を切り上げているのに、MACDは高値を切り下げるダイバージェンスが発生した後に、株価が上昇から下落へと流れが大きく変わっています。
なお、ダイバージェンスからはトレンド転換の可能性が読み取れますが、必ずトレンド転換が起こるとは限りません。
勢いの強いトレンドにおいては、ダイバージェンスを繰り返しながらトレンドが継続することもあります。
ダイバージェンスは参考情報の一つとして有用ですが、それ単独でトレード根拠としない方が無難かもしれません。
MACDヒストグラムの見方・使い方
ここまでは、通常のMACD(MACD線とシグナル線)の使い方を中心に解説してきました。
MACDにはこれ以外にも、ヒストグラムという重要な構成要素があります。
この章では、ヒストグラムにスポットを当てて細かく見ていきましょう。
MACDヒストグラムと通常のMACDとの違い
MACDヒストグラムが示すのは、通常のMACDを構成する2つの要素、MACD線とシグナル線の距離です。
一般的にMACDヒストグラムは、その名前の通りヒストグラム(棒グラフに似た形のグラフ)形式で表示されます。
MACDヒストグラムの特徴としては、以下の2点が挙げられます。
- 通常のMACDのゴールデンクロス・デッドクロスを確認できる
- ゴールデンクロス・デッドクロスの兆候をより早く捉えられる
通常のMACDにおける代表的なサインとして、先述したMACD線とシグナル線がクロスするゴールデンクロス・デッドクロスがあります。
この点、MACDヒストグラムはMACD線とシグナル線の距離を示すので、両者がクロスする際には距離がゼロとなり、MACDヒストグラムもゼロとなります。
つまり、MACDヒストグラムを見るだけで、通常のMACDの重要サインを識別することができるわけです。
さらに、ヒストグラムがゼロになる前には、どこかでヒストグラムの反転(棒が短くなること)が必ず起こります。
そのため、ヒストグラムの反転を、ゴールデンクロス・デッドクロスの兆候とみなすことも可能です。
これによって、ゴールデンクロス・デッドクロスよりも早くトレンド発生を捉えられることがあります。
ちなみに、本記事のチャート画像で使用しているのは、TradingViewに標準で内蔵されているMACDです。
このMACDでは、MACDヒストグラムの反転時に色が変わるように設定でき、ゴールデンクロス・デッドクロスの兆候をいち早く見つけやすくなっています。
MACDヒストグラムを使ってみたい人は、ぜひTradingViewのMACDを使ってみてください。
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MACDヒストグラムのダイバージェンスは2種類
通常のMACDと同様に、MACDヒストグラムを使用してダイバージェンスを確認することが可能です。
MACDヒストグラムのダイバージェンスとしては、以下の2種類があります。
- 価格とMACDヒストグラムのダイバージェンス
- MACD線とMACDヒストグラムののダイバージェンス
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
価格とMACDヒストグラムのダイバージェンス
1つ目は、MACD線の代わりにMACDヒストグラムを使ってダイバージェンスを判定する方法です。
上の画像では、小松製作所(6301)の日足チャートを使って、価格とMACDヒストグラムが逆行したところに白矢印を入れています。
相場はこのダイバージェンスを境に、トレンドが下降から上昇へと転じています。
ちなみに、このタイミングで通常のMACD線を使ったダイバージェンスは起こっていません。
MACDヒストグラムはダイバージェンスが起こりやすいため、MACD線では見つけられないダイバージェンスも捉えられるのがポイントです。
MACD線とMACDヒストグラムのダイバージェンス
2つ目は、価格の代わりにMACDヒストグラムを使ってダイバージェンスを判定する方法です。
上の画像はソニーグループ(6758)の週足チャートを使って、MACD線とMACDヒストグラムが逆行したところを白矢印で示しています。
見ての通り、このダイバージェンスを境に、上昇トレンドが終わり下降トレンドが始まっています。
なお、エントリーポイントとしては、このダイバージェンスが発生した後のデッドクロスが最適でした。
トレンド発生時において、MACDのダイバージェンスからのゴールデンクロス・デッドクロスというのはよくあるパターンの一つなので、ぜひ頭に片隅にでも置いておくといいでしょう。
MT4/MT5におけるMACDヒストグラムの設定
MT4やMT5において標準のMACDをチャートに適用すると、上の画像のように1本の点線とヒストグラムが表示されます。
このように、MT4やMT5のMACDは少し変わった表示のされ方をするので注意が必要です。
ちなみに赤い点線が意味するのがシグナル線で、ヒストグラムが意味するのがMACD線となっており、いわゆるMACDヒストグラムは表示されません。(MACDヒストグラムは、別のインジケーターとして用意されています。)
なお、ツールにあるメタエディターからプログラムを書き換えることで、次の画像のようにMACD線をライン表示することも可能です。
さらにこのサブチャート上に、MACDヒストグラムを表示する「OsMA」というインジケーターを適用したのが、次の画像です。
なお、そのまま適用するだけでは表示が崩れるため、サブチャートの上限と下限の設定をMACDとOsMAで揃える必要があります。
また、ヒストグラムの色を変える設定には対応していません。
このように、MT4やMT5でもよくあるMACDの形で表示することは可能ではあります。
ただ、細かい設定が必要なので、MACDヒストグラムを使用したい人にはTradingViewの方がお手軽なところがありそうです。
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MACDヒストグラムの計算方法
最後に、MACDヒストグラムの計算方法についても、もう一度確認しておきましょう。
この式からも分かるように、MACDヒストグラムは、MACD線とシグナル線の差を示しています。
とてもシンプルな計算式ですが、これによってMACD線とシグナル線の幅の伸び縮みが視覚化され、より深い分析が可能になっているわけです。
株におけるMACDに対するTwitter(X)の声
Twitterにおいても、MACDを株式売買に活用している例が複数確認できました。
MACDといえばFXのイメージが強いかもしれませんが、株価チャートの分析に使う人も多いようです。
MACDで株価チャート分析を行う際の注意点
MACDは株価チャート分析を行う上で有用なインジケーターですが、以下のような弱点もあります。
- ダマシが発生しやすい
- パラメータ設定の調整が難しい
では、それぞれについて細かく解説を行っていきます。
MACDをしっかり使いこなすためにも、これらの注意点はしっかり押さえておくようにしましょう。
ダマシが発生しやすい
上の画像は、小松製作所(6301)の日足の株価チャートにMACDを表示して、ゴールデンクロスが発生したところを白丸で示しています。
「買い」と示したところが2ヶ所ありますが、その後は上昇が継続せずにいずれもダマシに終わった形です。
MACDはトレンドが発生したと判断するタイミングが早いため、このようにトレンドにつながらない動きでもサインが出てしまうことがあります。
また、上の画像の四角で囲んだところでは、MACD線とシグナル線が細かくクロスを繰り返しています。
株価の上下動がジリジリとしている場合、こういった形でMACDがうまく機能しないこともあるので注意が必要です。
MACDは合った相場において非常に良いトレードタイミングを示す一方、合わない相場ではうまく機能しないことになります。
MACDを使いこなす上では、MACDの使いどころを見極めることが非常に大切と言えるでしょう。
パラメータ設定の調整が難しい
MACDの計算式には3つのEMAが出てきますが、これらの期間を調整することでMACDの各構成要素の動き方は変わります。
同じMACDであってもパラメータ設定が変わればサインの出るタイミングが異なるわけで、トレード成績にも大きな影響が出るでしょう。
これは、MACDはどんな相場にも対応できる柔軟性があるというメリットとも捉えることができます。
しかし、同時にMACDを本当に使いこなす上では、分析対象や手法に合わせてパラメータ設定を調整する必要があるということで、難易度が上がるという側面もあります。
もちろん基本的には既に紹介した一般的なパラメータ設定を使えば問題ありません。
しかし、MACDをより使いこなしていく上では、自分に合ったパラメータ設定を探す必要があるかもしれないということも、頭に入れておきたいところです。
なお、その際には以下の記事などを参考にしながら、バックテストで検証を行うことをおすすめします。
MACDが使える株アプリ
MACDは株価チャート分析において人気のインジケーターで、多くのスマートフォンの株アプリでも使用することが可能です。
ここでは、MACDが使用できる株アプリを2つ紹介しておきます。
SBI証券 株アプリ
上の画像では、SBI証券の株アプリ(Android版)で日経平均株価の日足チャートにMACDを表示しています。
緑ラインがMACD線で、黄ラインがシグナル線で、ヒストグラムは赤と青で表示される形です。
楽天証券 iSPEED
上の画像では、楽天証券のiSPEED(Android版)で、日本郵船(9101)の週足の株価チャートにMACDを表示しています。
紫ラインがMACD線で、緑ラインがシグナル線です。(こちらのアプリでは、ヒストグラムは省略されています。)
このように多くの株アプリでもMACDが使えるようになっており、MACDは株式トレーダーにとって身近なインジケーターと言えるでしょう。
まとめ:MACDを使ってトレンドを捉えよう
今回は、MACDを使った株価チャート分析の進め方について、基本的なところを一気に解説してきました。
さまざまな面を解説してきましたが、やはり最も定番のMACDにおけるゴールデンクロス・デッドクロスをしっかり押さえていただければと思います。
MACDを使うとトレンドを捉えやすくなり、トレンドに乗ったトレードがしやすくなるはずです。
まだMACDを試したことがないという人は、一度試してみることをおすすめします。
なお、MACDについてもっと詳しく知りたいという人向けに、以下の記事ではMACDを網羅的に解説しています。
興味のある人は、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。