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エリオット波動(応用編)基本形以外の変則4パターンについて

2023年02月08日 公開 
2024年11月15日 更新
エリオット波動4パターン-アイキャッチ
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エリオット波動には基本以外の4パターンがある

  • エリオット波動には、基本形以外に様々な変則パターンがある
  • 例えば多くの場合、推進波における第1波・第3波・第5波の1つは延長し、その中で5つの波が形成される(エクステンション)
  • 修正波で押さえておきたいのは、ジグザグ・フラット・トライアングル・複合型の4パターン
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エリオット波動の基本形を復習

エリオット波動理論は、相場によく現れる波形をもとに今後の相場展開を予想していく相場分析方法です。

その基本の波形は、以下のような上昇局面5波、下降局面3波です。

なお、上下が逆の下降局面5波、上昇局面3波となることもありますが、基本形としては上昇局面5波、下降局面3波を想定して説明していきます。

エリオット波動の基本形

上の画像は、エリオット波動理論における基本形を図で示したものです。

上昇局面では上昇する動き(上図の第1波・第3波・第5波)を推進波と呼び、それとは反対方向に下落する動き(上図第2波・第4波)を修正波と呼びます。

同様に、下降局面では下落する動き(上図のA波・C波)を推進波と呼び、それとは反対方向に上昇する動き(上図のB波)を修正波と呼びます。

これらの波の値幅はフィボナッチ比率となるケースがよく見られます。その性質を利用することで有利なトレードタイミングをあらかじめ予測することが可能です。

エリオット波動に見られるフラクタル構造

引用元:『エリオット波動入門』p.35

上の画像で示しているように、エリオット波動の1つの波の中には、同じようなエリオット波動の波形が確認できます。

1つの推進波を拡大してみると5つの波が見えてきます。そして、1つの修正波も拡大してみると3つの波が見えてきます。こういった形状は、フラクタル構造と呼ばれます。

つまり、1つの推進波は「推進波→修正波→推進波→修正波→推進波(第1波~第5波)」に分解でき、1つの修正波は「推進波→修正波→推進波(A波~C波)」に分解できるわけです。

また、逆に目線を広くより大きい規模で見てみると、自分が見ているエリオット波動のワンセット(第1波~第5波、A波~C波)は、より大きなエリオット波動における1つの推進波と修正波に過ぎないとも言えます。

エリオット波動を活用していく上で、この構造は非常に大事なのでしっかり押さえておきましょう。

ちなみに、チャート上で波をカウントする際には、上図のように「1、2、3、4、5、A、B、C」と書き込むのが一般的です。「第1波の終点に1、第2波の終点に2、第3波の終点に3…」という形で書き込んでいきます。

この際、波のサイクルの大きさによって⑴⑵⑶⑷⑸や①②③④⑤といった形で書き分けると、判別しやすくなるのでおすすめです。

エリオット波動には数多くの変則パターンがある

ここまでは、エリオット波動の基本形についてのお話でした。

しかし、この形だけを相場に当てはめようとすると、なかなかうまくいかないと感じることが多いでしょう。

それを補う形で、エリオット波動には様々な変則パターンが存在しています。

今回は、この変則パターンを押さえることによって、エリオット波動を通した相場理解が格段にやりやすくなるので、しっかり押さえておきましょう。

なお、エリオット波動の基本の考え方やフィボナッチ比率に関しては、以下の2つの記事でそれぞれ詳細に解説しています。本記事に併せて、こちらもぜひチェックしておいてくださいね。

推進波のパターン

エリオット波動の基本形は、次の画像のような上昇局面5波と下降局面3波で構成されます。

上昇局面5波、下降局面3波における推進波

この中で、推進波は全体の局面方向へ伸びる波のことを指します。

つまり、上の画像で示している8つの波のうち色が付いている部分(上昇局面における上昇の波、下降局面における下落の波)が、推進波ということです。

この色が付いた推進波が変則的な形となるパターンを、この章では詳しく説明してきます。

推進波のパターンは、以下の2つです。

  • インパルス(衝撃波)
  • ダイアゴナルトライアングル(斜行三角形)

これらの推進波のパターンについて細かく見ていきましょう。

なお、ここからは基本的に上昇の推進波を想定して解説していきます。下落の推進波については、上下を逆にして考えていただければと思います。

インパルス(衝撃波)は押し目が起点を割り込まない

インパルスの基本形

インパルスは基本形として紹介したものと同じ形であり、上の画像のような5つの波です。

相場が大きく伸びるときによく現れる波形で、インパルスには以下の3つのルールがあります。

インパルスの3つのルール

  • 第2波が第1波の起点を割り込むことはない
  • 第3波が最も短くなることはない
  • 第4波が第1波の終点を割り込むことはない

第3波が最も大きく伸びやすいイメージで、ルールにもある通り少なくとも最も短くなることはありません。

また、上値と下値はともに切り上げていく中で、第3波に対する修正の第4波が、第1波の上値を割り込むことがないのもポイントです。

この基本形であるインパルスの中でもいくつか変則パターンが起こるので、続いてそれを見ていきましょう。

エクステンション(延長)は第三波で発生しやすい

インパルス波は基本形の形で説明できることはむしろ少なく、多くの場合にこの「エクステンション(延長)」と呼ばれる形が含まれています。

インパルスのエクステンション

引用元:『エリオット波動入門』p.45

基本形では第1波、第3波、第5波は1つの波ですが、エクステンションのパターンでは、上の画像のようにその波の中に5つの波が発生して延長される形になっています。

画像左側は第1波がエクステンションして5つの波になったパターン、画像真ん中は第3波がエクステンションして5つの波になったパターン、画像右側は第5波がエクステンションして5つの波になったパターンです。

通常、1つのインパルスの中にエクステンションが確認できる波は1つだけで、最もエクステンションが起りやすいのは第3波と言われています。

仮に第1波が単純な1つの波で第3波にエクステンションが起った場合(画像真ん中のパターン)、第5波は第1波と同様に単純な1つの波になると予測できます。

第1波にエクステンションが起こるケースもありますが(画像左側のパターン)、この場合は続く第3波、第5波にエクステンションが起こりにくいと考えられます。

同様に、第1波、第3波にエクステンションが起こらないケースもありますが、このときには第5波にはエクステンションが起る可能性が高いと予測できるでしょう(画像右側のパターン)。

エクステンションを踏まえると、波のカウントがやや複雑になりますが、エクステンションが起きてもインパルスの3つのルールを逸脱しないことには変わりません。

例えば第3波が最も短くなったり、第1波と第5波が重ったりするようなカウントになっていれば、それは明確な誤りになので注意してください。

エクステンションの中で見られるエクステンション

引用元:『エリオット波動入門』p.47

ちなみに、エクステンションした5つの波の中で、さらにエクステンションが見られるケースもあります。

例えば上の画像は、第3波がエクステンションし、それによって形成された中の第3波がさらにエクステンションしている形です。

こういったパターンも踏まえて、強いトレンドでインパルスが見られる際には、柔軟に波のカウントを行うようにしましょう。

フェイラー(失敗)は第5波が第3波の上値を超えられない現象

基本形では、上値と下値の切り上げが最後まで続きますが、実際には第5波が第3波で作った上値を超えられないケースがあります。

これは、「フェイラー(失敗)」と呼ばれる現象です。(「トランケーション(切頭)」という表現が使われることもあります。)

インパルスのフェイラー(トランケーション)

引用元:『エリオット波動入門』p.48

上の画像がフェイラーのイメージで、第5波の勢いが弱く、第3波を超えられない形となっています。

フェイラーは、第3波が大きな波となった際に現れることがよくあります。

インパルスを確認した場合に、第5波が必ず第3波の高値を超えると想定していると、特にエグジットのタイミングを見逃してしまう可能性があるので注意が必要でしょう。

一般にトランケーションは予想される第5波に5つの必要な副次波が含まれることに気づけば確認できるだろう。

エリオット波動入門 p.48

ダイアゴナルトライアングル(斜行三角形)は第1波の終点を第4波が割り込む

ダイアゴナルトライアングル

ダイアゴナルトライアングル(斜行三角形)は上の画像で示しているような形で、以下の2つのルールがあります。

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ダイアゴナルトライアングルの3つのルール

  • 上値と下値を切り上げながら、値幅が収束していく(稀に拡大するパターンあり)
  • 第1波の終点を第4波が割り込む

インパルスと大きく異なるのは第1波と第4波が重なっている点で、これが大きな特徴です。

また、上値と下値をつないだラインが三角形を描くので、この形状を意識すると見分けやすくなります。

ダイアゴナルトライアングルは、出現する局面によっていくつかのパターンに分かれるので、それぞれ見ていきましょう。

エンディング・ダイアゴナルトライアングル(3-3-3-3-3)はトレンド転換の前兆

エンディング・ダイアゴナルトライアングルの形状

上の画像では、エンディング・ダイアゴナルトライアングルのイメージを示しています。

通常の推進波は「5波-3波-5波-3波-5波」に分解されますが、エンディング・ダイアゴナルトライアングルは全てが3波の「3波-3波-3波-3波-3波」となるのが特徴です。

エンディング・ダイアゴナルトライアングルは、トレンドが大きく反転する前兆ともされています。

例えば、上昇局面でエンディング・ダイアゴナルトライアングルが現れた場合には、その後の急落を想定しておく必要が出てきます。

なお、エンディング・ダイアゴナルトライアングルは、値幅が狭まる形ではなく広がっていく形として現れるケースもあります。

非常に稀なケースではありますが、こういったパターンも頭に入れておくといいかもしれません。

エンディング・ダイアゴナルトライアングルが確認される局面

上の画像は、8つの波の中でエンディング・ダイアゴナルトライアングルが現れやすい場所を示したものです。

基本的にエンディング・ダイアゴナルトライアングルは、第5波で見られやすい推進波のパターンとされています。また、稀にC波(エリオット波動最後の波)に現れることもあります。

特にそれまでの推進波の勢いが強く、速く大きく動いたようなときに現れることが多くあります。

リーディング・ダイアゴナルトライアングル(5-3-5-3-5)はインパルスの始まりを予測できる

リーディング・ダイアゴナルトライアングルが確認される局面

ダイアゴナルトライアングルは、上の画像で示したように推進波の最初(第1波)修正波の最初(A波)で現れるケースもしばしばあります。

これが、「リーディング・ダイアゴナルトライアングル」と呼ばれるパターンです。

リーディング・ダイアゴナルトライアングルの形状

引用元:『エリオット波動入門』p.54

上の画像は、リーディング・ダイアゴナルトライアングルのイメージを示したものです。

こちらはエンディング・ダイアゴナルトライアングルと違い、通常の推進波と同じ「5波-3波-5波-3波-5波」の流れとなります。

例えば、トレンドの初動において波をカウントする際、第3波があまり伸びずに第4波が第1波の価格帯に入り込んでくるようなことがあります。

こういった場合には、リーディング・ダイアゴナルトライアングルとなった第1波であると設定して、その後(第3波)のインパルスの始まりを予測するといいかもしれません。

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修正波のパターン

繰り返しになりますが、エリオット波動の基本形は次の画像のような上昇局面5波と下降局面3波で構成されます。

上昇局面5波、下降局面3波における修正波

この中で、修正波は全体の局面と反対方向へ調整する波のことを指します。

つまり、上の画像の中で色が付いている部分(上昇局面における下落の波、下降局面における上昇の波)が修正波ということです。

この色が付いた修正波が変則的な形となるパターンについて、この章では詳しく説明していきます。

推進波と比べて修正波のパターンは、非常にバリエーションが豊富です。ここでは、修正波のパターンを以下の4つに分類した上で、それぞれ細かく見ていきます。

  • ジグザグ
  • フラット
  • 水平トライアングル
  • 複合型

上記の分類の中で、さらに細かくパターンが分かれていきます。紹介するパターンの数は非常に多くなりますが、頑張って全てのパターンを頭に入れておくようにしましょう。

なお、基本的に下落の修正波について解説していきます。上昇の修正については、上下を逆にして考えていただければと思います。

ジグザグ(5-3-5)は最もオーソドックスな修正波のパターン

ジグザグ(シングルジグザグ)

引用元:『エリオット波動入門』p.57

ジグザグは、基本形で紹介したものと同じ下降局面3波(A波、B波、C波)の形状のことで、最もオーソドックスな修正波のパターンです。

上の画像のように、ジグザグにおけるA波とC波は全体の方向(下落方向)に沿った動きをする推進波であり、より細かく5つの波に分解することができます。

また、ジグザグにおけるB波は全体とは反対方向の動きをする修正波であり、より細かく3つの波に分解することができます。

つまり、ジグザグを一段階細かいレベルに分解して見ると、「5波-3波-5波」という形になるわけです。

ジグザグが確認されやすい局面

上の画像は、修正波がジグザグのパターンになりやすい局面を示しています。

インパルスにおける修正波は第2波と第4波ですが、第2波がこのジグザグのパターンになりやすいと言われています。一方、第4波がジグザグになることはあまりありません。

ダブルジグザグとトリプルジグザグ

基本形のジグザグは「シングルジグザグ」とも言われ、ジグザグが1回だけ現れる形です。

しかし、ジグザグによる修正が浅すぎる場合などにおいては、上の画像のようにジグザグが3つの波を挟んで2回、3回と連続することもあります。

画像左側のように2回連続するジグザグは「ダブルジグザグ」、画像右側のように3回連続するジグザグは「トリプルジグザグ」と呼ばれます。

なお、ジグザグの間に挟まれる3つの波は「X波」と呼びますが、これも修正波としてジグザグを形成するのが通常です。

また、ジグザグが連続する場合、1つ目のジグザグはW波、2つ目のジグザグはY波、3つ目のジグザグはZ波としてカウントします。

このため、トリプルジグザグであれば、全体で「W波-X波-Y波-X波-Z波」という形状になり、ジグザグであるW波、Y波、Z波は、それぞれ「A波-B波-C波」を含んでいることになります。

フラット(3-3-5)は横ばいに近い形の修正波

ジグザグとフラットの違い

上の画像は、ジグザグとフラットの違いを示しています。

画像右側がフラットで、名前の通り横ばいに近い形の修正波です。

画像左側で示したジグザグよりも修正の力が弱く、最初のA波に5つの波を形成するほどの力がなく、3つの波にとどまっているのが特徴です。

つまり、一段階細かく分解してみると、フラットは「3波-3波-5波」の形になります。

フラットが確認されやすい局面

上の画像は、フラットが現れやすい局面を表しています。

ジグザグがインパルスにおける第2波に現れることが多かったのに対して、フラットは第4波に現れることが多いのもポイントです。

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なお、このフラットは、さらに以下の3パターンに分類されます。

  • レギュラーフラット
  • 拡大型フラット
  • ランニングフラット

それぞれの形状を細かく見ていきましょう。

レギュラーフラット

まずフラットの基本形である「レギュラーフラット」ですが、これは次の画像のような形をしています。

レギュラーフラット

引用元:『エリオット波動入門』p.62

見ての通りレギュラーフラットは完全な横ばいで、A波の始点とB波の終点がほぼ同じ水準となっています。

また、C波はA波の終点を少し超えたところまで伸びる形です。

拡大型フラット

拡大型フラット

引用元:『エリオット波動入門』p.63

上の画像は「拡大型フラット」と呼ばれる形で、B波がA波の始点を超え、さらにC波もA波の終点をより大きく超えているのが特徴です。

なお、エリオットはこの形を「イレギュラーフラット」と呼んでいましたが、実際にはレギュラーフラットよりも多く確認できるとされています。

エリオットはこうしたタイプを「イレギュラーなフラット(Irregular Flat)」と呼んだが、実際にはこのパターンが「レギュラーなフラット」よりもはるかに頻繁に出現するので、この言葉は適当ではない。

エリオット波動入門 p.63

ランニングフラット

ランニングフラット

引用元:『エリオット波動入門』p.65

最後のランニングフラットは、上の画像のようにB波がA波の始点を超えますが、C波がA波の終点を超えられない形です。

もともとの推進波の勢いの影響を強く受けていることにより、ランニングフラットのような形状になると考えられます。

ただし、このケースが見られることはほとんどありません。

そのため、ラインニングフラットと認識する際には、波のカウントが誤っていないか、ルールの逸脱がないかをよく確認して、波の設定を慎重に行った方がいいかもしれません。

水平トライアングル(3-3-3-3-3)は5つの波に分解できる

水平トライアングルの基本

上の画像は、水平トライアングルの基本となるイメージを示しています。

この水平トライアングルは、買いと売りの力が拮抗しているような局面で見られやすい形です。

これまで紹介した修正波と大きく異なるのは、水平トライアングルは5つの波に分解できるという点です。

また、5つの波は「A波-B波-C波-D波-E波」と表記されますが、それぞれの波を一段階細かく3波に分解することができます。つまり、「3波-3波-3波-3波-3波」という形です。

なお、これらの3波はシングルジグザグの形状となる場合がほとんどですが、その1つがレギュラーフラットや拡大型フラット、ダブルジグザグ、トリプルジグザグになることもあります。

この他、レアケースですが、最後E波がトライアングルの5つの波に分かれて、全体で9つの波にまで延長することもあります。

水平トライアングルの2パターン(収束型、拡大型)

収束型トライアングルと拡大型トライアングル

水平トライアングルは、大きく以下の2パターンに分類できます。

  • 収束型
  • 拡大型

上の画像左側のように収束型は値幅が狭まっていく形で、上の画像右側のように拡大型は値幅が広がっていく形をしています。

収束型の3パターン(対称型、下落型、上昇型)

対称型と下落型と上昇型

引用元:『エリオット波動入門』p.67

収束型については、三角形の形状によってさらに細かく「対称型」「下落型」「上昇型」の3パターンに分かれます。

上の画像左側のように、対称型は上下が斜めになっている基本的な形です。

これに対して、上の画像真ん中のように下落型は下側が水平に、上の画像右側のように上昇型は上側が水平になっています。

ランニングトライアングル(収束型における変則パターン)は出現頻度が多い

ランニングトライアングル

引用元:『エリオット波動入門』p.68

それぞれの収束型には、これまで紹介した通常の水平トライアングルとは違い、A波の始点をB波が超えていく「ランニングトライアングル」と呼ばれる変則パターンも存在します。

上の画像は、対称型がランニングトライアングルとなったパターンを示したものです。

先ほどのランニングフラットと同様のイレギュラーな形ですが、ランニングトライアングルは出現頻度が多いのでしっかり意識するようにしておきましょう。

水平トライアングは最後の推進波の手前に現れやすい

トライアングルが現れやすい局面

様々な水平トライアングルのパターンを見てきましたが、これらの形状はエリオット波動のワンセットにおける推進波や修正波の中の、最後の推進波の手前に現れやすいとされています。

具体的には、上の画像で示しているようなインパルスの第4波シングルジグザグのB波などです。

この他、ダブルジグザグやトリプルジグザグであれば最後のX波などでも見られることがあるので、こちらも併せて頭に入れておくといいでしょう。

複合型は修正波のパターンが複数繰り返される形

ダブルスリーとトリプルスリー

引用元:『エリオット波動入門』p.71

複合型とは、上の画像のように修正波のパターンが複数回繰り返される形のことです。

画像右側のように繰り返される回数が2回であれば「ダブルスリー」、画像左側のように3回であれば「トリプルスリー」と呼びます。

ちなみに、ここで言う「スリー」とは修正波(3つの波)を指していると考えられます。(水平トライアングルは修正波としては例外的に5つの波で構成されますが、これも「スリー」と表現されている形です。)

上図のように、修正波と修正波の間はX波によってつなげられます。このX波については、基本的にはジグザグの形状となります。

ちなみに、複合型はダブルジグザグやトリプルジグザグと似ていると感じた人もいると思います。

これはその通りなのですが、ダブルジグザグやトリプルジグザグは修正幅が短すぎる際に起こり、ジグザグが繰り返し発生することで、修正幅が大きく広がるのに対し、複合型は修正波を繰り返しても修正幅があまり広がらないという違いがあります。

つまり、複合型は修正期間が延長されている状態であり、全体として横ばい相場になっているというイメージを持つといいでしょう。

ダブルスリーのパターン例

引用元:『エリオット波動入門』p.71

上の画像は、「フラット→水平トライアングル」「フラット→ジグザグ」のダブルスリーの例を描いています。

このような形で、複合型は異なる修正波のパターンの組み合わせとなるケースが多いようです。

中でも、「フラット→水平トライアングル」という形のダブルスリーが確認できるとされています。

また、水平トライアングルの特徴として、最後の修正波として現れやすいということを紹介しましたが、この複合型においても水平トライアングルは最後に現れやすいと考えられています。

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エリオット波動の注意点、懸念点

エリオット波動の様々な波形パターンを紹介しましたが、これらをうまく実際の相場に当てはめることができれば、非常に有利なトレードポイントを見つけ出すことができます。

しかしながら、エリオット波動を使っていく上では注意しておきたいこともあります。

ここでは、エリオット波動の注意点や懸念点についても触れておきたいと思います。

使いこなすには練習が欠かせない

エリオット波動には様々なパターンがあり、これらを駆使することでほとんどの相場を説明することが可能です。

しかし、それにはかなり練習が必要で、理屈をインプットしたからといってエリオット波動をすぐに使いこなすことはできません

明確な売買シグナルがあるようなインジケーターと違って、エリオット波動には相場の解釈が曖昧になりやすいところもあります。

そのため、エリオット波動的な相場の見方を身に付けるためには、どうしてもそれ相応の経験を積まないと難しいと言えるでしょう。

エリオット波動は有効な相場分析理論ではありますが、それをトレードに生かせるようになるには、実際の相場で何度も練習を繰り返す必要であることは、よく認識しておいた方がいいでしょう。

相場分析が後付けになることがある

多くの場合、エリオット波動を使えば過去の相場を説明することが可能ですが、トレードにおいて本当に大切なのは将来の相場を予測することです。

実際のトレードでエリオット波動を使う場合も、リアルタイムで相場にエリオット波動パターンを予測しながら当てはめていくことになります。

その際、当てはめた波形パターン通りに相場が推移するとは限らず、そうならないことも当然ながらよくあります。

もし想定したパターンに当てはまらない場合には、波のカウント方法を変えたり、別の波形パターンを当てはめたりすることによって、相場の解釈を随時変えていく必要があります。

このように、最終的にはエリオット波動を使って相場を説明することはできますが、必ずしもリアルタイムで相場を説明できるとは限らないわけです。

こういったことから、「エリオット波動理論は後付けだ」という批判もあるようです。

そもそも将来の相場を完璧に予測するのは不可能なので、これはエリオット波動に限った話ではないと思いますが、エリオット波動で相場を完全に予測できるわけではないということは、きちんと認識しておいた方がいいかもしれません。

エリオット波動理論の成り立ち

考案者

ラルフ・ネルソン・エリオット

種類

相場理論

歴史

エリオット波動理論を確立したラルフ・ネルソン・エリオットは1871年に生まれ、もともとは会計士として成功した人物でした。

彼が相場の世界に入っていくのは1920年~1930年頃で、その中で過去の膨大な相場データを検証して、相場の中に規則性があることを発見します。

その理論は著書としてまとめられ、1938年に『The wave principle(波動の原理)』、1946年に『Nature’s law : The secret of the universe(自然の法則~宇宙の神秘~)』が出版されました。

ただ、これらの著書は大きな注目を集めることなく、エリオットは1948年にこの世を去ります。

エリオット波動理論が注目されるようになったのは、エリオットの死後に彼の理論が紹介されるようになってからです。

エリオット波動理論が広く世間で知られるようになった書籍としては、1964年のA・ハミルトン・ボルトンの『The Elliott Wave Principle - A Critical Appraisal(エリオット波動-ビジネス・サイクル)』(※1)が挙げられます。

その後もたくさんのエリオット波動理論に関する書籍は刊行されていますが、1977年の『Elliott Wave Principle : Key to Market Behavior(エリオット波動~市場行動のカギ~)』(※2)などが有名でしょう。

こうして現在ではエリオット波動理論は定番の相場理論となっており、数多くのエリオット波動理論の信奉者たちが、日々相場の波を分析しているわけです。

(※1)訳書:『エリオット波動―ビジネス・サイクル』(日本証券新聞社)
(※2)訳書:『エリオット波動入門』(パンローリング)

豆知識

エリオット波動によく似た相場分析として、フォーメーション分析という相場によく起るチャートパターンを利用するものがあります。

このフォーメーション分析とエリオット波動理論には、共通するパターンが多くあります。

フォーメーション分析における下降ウェッジ

上の画像はフォーメーション分析のウェッジと呼ばれる形を描いていますが、これはエリオット波動におけるダイアゴナルトライアングルと非常に似ています。

フォーメーション分析におけるシンメトリカルトライアングル

また、上の画像はフォーメーション分析におけるシンメトリカルトライアングルと呼ばれる形を描いていますが、これは水平トライアングルの対称型と非常に似ています。

このシンメトリカルトライアングル以外にも、フォーメーション分析にはさまざまなトライアングルのパターンがありますが、これらにはエリオット波動における水平トライアングルの各パターンと多くの共通点が見られます。

エリオット波動理論では、相場全体の流れの中で波形パターンを見ていくのに対し、フォーメーション分析では、相場の局面ごとにスポットを当てて、チャートパターンに注目する形です。

エリオット波動理論とフォーメーション分析では、相場を分析する際の切り口に少し違いがあるかもしれませんが、その結果として共通のパターンが見られるのは、非常に興味深いと言えるでしょう。

そういう意味で、実際のトレードに活用するかどうかは別にして、理論として両方を押さえておくのは、相場を深く理解する上で有用なことだと思います。

フォーメーション分析については以下の記事で詳細に解説しているので、気になる人はこちらもぜひチェックしていただければと思います。

用語

  • 推進波
  • 修正波
  • フラクタル構造
  • インパルス(衝撃波)
  • エクステンション(延長)
  • フェイラー(失敗)
  • トランケーション(切頭)
  • ダイアゴナルトライアングル(斜行三角形)
  • エンディング・ダイアゴナルトライアングル
  • リーディング・ダイアゴナルトライアングル
  • ジグザグ
  • シングルジグザグ
  • ダブルジグザグ
  • トリプルジグザグ
  • フラット
  • レギュラーフラット
  • 拡大型フラット
  • ランニングフラット
  • 水平トライアングル
  • 収束型
  • 対称型
  • 下落型
  • 上昇型
  • レギュラートライアングル
  • ランニングトライアングル
  • 拡大型
  • 複合型
  • ダブルスリー
  • トリプルスリー
  • フォーメーション分析
  • ウェッジ
  • シンメトリカルトライアングル
  • アセンディングトライアングル

エリオット波動に関連するインジケーター、ツール

最後に、実際にエリオット波動を利用する上で、便利なTradingViewの描画ツールを紹介したいと思います。

ダブルスリーのパターン例

上の画像は、TradingViewで用意されているエリオット波動の波形をチャート上でカウントするのをサポートする描画ツールを、実際のチャートで使用して相場を整理したものです。

なお、(上の画像では使用されていないものもありますが)TradingViewにおけるエリオット波動向けの描画ツールには以下の5種類があります。

  • エリオット推進波(12345)
  • エリオット修正波(ABC)
  • エリオット波動トライアングル(ABCDE)
  • エリオット波動トリプルコンボ(WXYXZ)
  • エリオット波動ダブルコンボ(WXY)

これらを使えば、エリオット波動における一通りの波形をチャート上でカウントすることが可能です。

まず、エリオット推進波(12345)とエリオット修正波(ABC)は、基本形の推進5波・修正3波をカウントするのに使います。

続いて、エリオット波動トライアングル(ABCDE)を使えば、修正波の水平トライアングルのパターンをカウントできます。

また、エリオット波動ダブルコンボ(WXY)は修正波におけるダブルジグザグやダブルスリーを、エリオット波動トリプルコンボ(WXYXZ)は修成派におけるトリプルジグザグやトリプルスリーのカウントにピッタリです。

エリオット波動をチャートから見つける際に、これらの描画ツールがあると非常に便利です。

エリオット波動理論の練習が効率良くできるので、ぜひTradingViewの上記ツールを有効活用していただければと思います。

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著者
Runchaテクニカル分析チーム
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日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト|4大監査法人出身者|TradingViewインジケーター開発者|EA開発者|

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監修者
山中康司

有限会社アセンダント

学歴: 慶應義塾大学卒業

著書: 『FXチャート分析マスターブック FX ボリンジャーバンド常勝のワザ』(2013年12月)

来歴: アメリカ銀行バイスプレジデント → 日興シティ信託銀行為替資金部次長を歴任。・金融コンサルティング会社アセンダント設立。金融リテラシー協会代表理事を務める。



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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
山中 康司 金融リテラシー協会 代表理事
アセンダント取締役
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