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デューデリジェンスとは|手順や費用、注意点などを徹底解説

2024年02月19日 公開 
2024年03月05日 更新
デューデリジェンスとは|手順や費用、注意点などを徹底解説
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デューデリジェンスとは、M&Aの最終契約を結ぶ前の段階で、買収対象企業または事業に対して実施される各種調査のことをいいます。

デューデリジェンスはその種類も多く、実施に際しては一定の期間と費用が必要です。

一方、デューデリジェンスを徹底して行えば、買収側はリスクを最小限に抑えつつ、安心してM&Aを行えます。

本記事では、デューデリジェンスについて、その目的、種類、手順と費用、実施における注意点など詳しく解説します。

デューデリジェンスとは? 

デューデリジェンスとは、会社や個人が投資を行う際、投資先の価値やリスクなどを調査する行為をいいます。

これをそのままM&Aにおけるデューデリジェンスで言い換えると、買い手側が売り手側企業または事業の経営状況や財務状況などを外部から調査することといえます。

英語ではDue Deligenceと表記され、DDと略されたり、日本語で買収監査と呼ばれたりします。

デューデリジェンスは、主としてM&Aや事業承継、組織再編等を行う際に、買い手側が外部の専門家(弁護士・公認会計士・税理士・M&Aコンサル等)に依頼し、自社のM&Aチームとタッグを組んで一定期間内に実施します。

デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスによる調査には実施する明確な目的があります。

以下の3つがその主な目的です。 

買収のメリットとリスクを把握するため

デューデリジェンスを実施する1つ目の目的は、買い手が対象企業・事業の実態を正確に把握して、買収のメリットやリスクを理解することにあります。

買収によってどんな相乗効果(シナジー)が得られるか、将来、トラブルにつながる重大な潜在的リスクを抱えていないかなどは、買い手にとって極めて重要な関心事です。

デューデリジェンスの実施で売り手側の状況を適切に把握することは、取引成立した後でもM&Aの当初の目的を果たすために極めて大事なプロセスとなります。 

売主買主間でのリスク配分に反映させるため

デューデリジェンスの2つ目の目的は、売主買主間でのリスク配分を取引に適切に反映させるためです。

具体的には、デューデリジェンスの結果をM&A契約書にリスク配分として盛り込んで文書化します。

実際のM&A取引では、デューデリジェンスの結果、たとえリスクが判明しても、それで買い手が直ちに取引を止めるということでもありません。

リスクを承知の上でM&Aを進めるということはよくあります。

ただしリスクの取扱いについては、そのリスクが顕在化した場合も含めて、どちらがそのリスクをどれぐらいの割合で負担するか、交渉において取り決めが必要です。

リスク分担については、売り手側がリスクを負う「取引実行前提条件」「表明保証」などがあり、買い手側がリスクを負う「容認事項」があります。

これらの項目を交渉でM&A契約書に盛り込み、双方がリスク負担分を納得の上、締結することで取引が円滑に進みます。 

買収実行後、スムーズに引継ぎを行うため

デューデリジェンスの3つ目の目的は、買収実行後に引継ぎをスムーズに行うためです。

M&Aは契約が締結された、買収資金が支払われたからといってそれで終わりではありません。

M&A成立後の売り手買い手間のスムーズな引継ぎこそ、むしろ重要事項といえます。

そのためにも買い手が売り手側の状況を、デューデリジェンスを通じて早めに把握しておけば、売り手の細かい特性も踏まえた引継ぎプランも事前に立てやすくなります。

ひいてはM&A実行後の引継ぎもトラブルを少なめにしてスムーズに行えます。 

デューデリジェンスのタイミングと期間

デューデリジェンスを実施するタイミングと必要とする期間は以下の通りです。 

タイミング 

デューデリジェンスが行われるタイミングは、M&Aの一連のプロセスのうち、基本合意契約書が結ばれたすぐ後です。

基本合意契約書とは、M&Aの最終的な契約書が締結される前段階で、売り手・買い手の売買の基本条件に係る合意内容を双方でまとめた書類となります。 

期間 

デューデリジェンスの実施の期間は、調査する企業の規模や行うデューデリジェンスの種類によって異なってきます。

規模の小さい企業・個人事業主なら数日で終わることもあるでしょう。

一方デューデリジェンスの対象企業の規模が大きかったり、店舗・工場等が複数に点在していたりするような会社の場合、その期間も長くなり数ヶ月に及ぶこともあります。

要するに、調査対象が大手になればなるほど、実施するデューデリジェンスの種類も多くなればなるほど、期間も長期化するのです。 

デューデリジェンスの種類 

デューデリジェンスは調査する対象企業・事業等に応じて様々な種類があります。

M&Aで実施される主なデューデリジェンスの種類は以下の通りです。 

事業デューデリジェンス 

事業デューデリジェンスとは、調査対象企業・事業に関して、そのビジネスモデルや弱み・強み、技術力や販売力、顧客との取引状況、取り巻く市場環境等を分析し、また経営者への聴き取りを通じて、事業継続の安定性や成長性を予測する調査です。

そのため事業デューデリジェンスは、ビジネスデューデリジェンスとも呼ばれたりします。

事業デューデリジェンスを通して、買収額に合った企業・事業かの判断を行うのです。 

財務デューデリジェンス 

財務デューデリジェンスとは、その会社・事業の実体純資産、正味収益力、キャッシュフロー、内部統制管理、簿外債務の有無や内在リスク等を把握するために行う調査です。

大手企業は監査法人がいるため、決算内容に不一致や不備があることはまれですが、事業規模が中堅・中小企業だとその実態はかなり変わります。

中堅・中小企業だと経営実態と決算内容が大きくずれていることもあり、リスク把握のためにも財務デューデリジェンスの実施は不可欠です。 

法務デューデリジェンス 

法務デューデリジェンスとは、対象企業・事業に対して、法務に関するリスク把握のため実施される調査です。

法務リスクを抱えたまま対象先を買収すると、後でそれが顕在化して買収企業の評価が下がり損失を被ったり、事業計画そのものに影響が及んできたりします。

法務デューデリジェンスで特に気をつけて調べたい項目が許認可と訴訟です。

許認可を持つ企業・事業を買収する場合、許認可がすでに効力を失っていたり、取消しされていたりすると、企業・事業そのものを引き継ぐことができなくなります。

また対象先が訴訟案件を抱えていると、買収先が後に莫大な賠償金を支払うリスクを負ってしまいます。

法務デューデリジェンスは、それらのリスクを下げる、あるいは引き継がないための重要な調査なのです。 

税務デューデリジェンス 

税務デューデリジェンスとは、対象企業・事業を買収後、経営に大きなマイナスの影響を及ぼす税務リスクがないかを把握するための重要な調査です。

もし調査の結果、大きな税務リスク(税の不納付、滞納等)が見つかったら、それでもM&A交渉を続けるかの判断に迫られます。

もちろん最終的に買収するとの判断に至ることもありますが、それも税務リスクの大きさ次第です。

場合によっては、当初のM&Aスキームを変更して、抱えた税務リスクを減らして契約締結することもあります。 

ITデューデリジェンス 

ITデューデリジェンスとは、対象企業の使用中の情報システムに関し、買収後もそのまま旧システムを使い続けられるか、または買収後に双方のシステムを統合しようとする場合、どんな新システムを導入するか、費用はいくらかかるか、等を判断するために実施が必要な調査のことです。

情報システムの構築は、企業にとって業務の効率化、高度化、省力化等で避けられない経営課題です。

そういう点でITデューデリジェンスは、今日のM&Aで極めて重要な調査のひとつといえるでしょう。 

人事デューデリジェンス 

人事デューデリジェンスとは、会社の重要な経営資源である人材について実施する調査です。

M&Aスキームにもよりますが、実施後、複数だった会社や事業を1本化することもあります。

その際、各社で運用していた人事制度に相当の開きがあると、統合後に混乱が予想されます。

特に買収された側の人材に人事面のポストや処遇、給与等で不満が発生して、期待をかけていた優秀な人材が突然退職したり、全体の士気が下がって労働生産性の低下を招いたりしてしまいます。

退職防止やモチベーションアップのためにも、人事デューデリジェンスの結果を踏まえた適切な対応が必要なのです。 

その他のデューデリジェンス 

当初に書いたように、M&Aで実施するデューデリジェンスの種類は多いです。

買収する企業・事業の属する業界や業種、目的、範囲、費用等で実施すべきデューデリジェンスの種類も大きく変化します。

以下、詳細は省きますが、税務・財務・税務等の主要デューデリジェンス以外に各所で実施されているデューデリジェンスの種類名だけ列記します。

  • デジタルデューデリジェンス
  • 技術デューデリジェンス
  • 知的財産デューデリジェンス
  • 環境デューデリジェンス
  • ガバナンスデューデリジェンス 

デューデリジェンスの手順 

デューデリジェンスは、M&Aの基本合意契約書が結ばれたあとに実施されます。

本章ではデューデリジェンスの実施の流れ(手順)を説明します。 

調査チームの組成及び調査方針の決定 

デューデリジェンスでは開始にあたり、デューデリジェンスの種類に合わせて、社内で専任チームを結成するとともに、対外的には個別の専門家に協力を依頼します。

そして調査チームが結成されたら、次は調査方針の決定です。

調査方針の決定では、デューデリジェンスで調査する項目、必要な調査期間、予算の上限等を大まかで決めておきます。

概要で決定というのは、デューデリジェンスの過程で予想外のリスクが発見されることもあり、その際の予算変更や人材投入も含めて臨機応変に対応するためです。 

チームで対象企業の情報を共有 

調査方針が決まれば、結成した調査チームで対象企業の情報の共有を行います。

共有内容は、対象先の基本情報、デューデリジェンスの内容、実施期間などです。

またスタッフ・専門家間のミーティングは適宜実施して、調査結果について情報交換を行うとともに進捗状況を確認します。 

必要資料のリスト化 

デューデリジェンスの際、対象企業から事前に調査に必要な基本情報は提供されています。

しかし実際のデューデリジェンスでは、一般的に基本情報だけでは足りず、追加の資料が必要です。

そのためにも最初に必要資料のリスト化が重要な手続きになります。

チームで協議してデューデリジェンス種類ごとに必要資料をリスト化、それを対象企業に示して追加でさらに詳しい資料を求めます。 

資料の確認及び分析 

対象企業からリストに基づき必要な資料が出されたら、次は資料を確認及び分析する作業があります。

出された資料の情報が本当に正確なものか、虚偽の内容が含まれていないか、専門家の見識や信頼できる外部資料とも照らし合わせつつ、判断及び分析していきます。 

オーナー・キーマンへの聴き取り 

デューデリジェンスでは、資料の確認や分析も必要ですが、それだけでは会社や事業の実態把握が困難なケースが多々あります。

そのような場合には、実務に携わっている会社のオーナー(経営者)や事業のキーマンへの直接的な聴き取りを実施します。

また聴き取り調査は専門家等がオーナーを事務所に呼びつけてヒヤリングするのでなく、相手先に直接出向いて、対象企業の社内施設で行われることが大事です。

なぜならデューデリジェンスでは現地調査も欠かせない重要な調査項目だからです。

ただしデューデリジェンスは対象企業の社員に秘密で行われることも多く、社内不安を避ける意味からも、社員が不在となる休日や祭日に行うなどの配慮も必要になります。 

結果報告書の提出及び方向性の議論 

当初に作った調査方針に基づき、一定期間内でのデューデリジェンスが終わると、チームは専門家の意見も踏まえ、結果報告書をレポートにまとめ買収企業の経営陣に提出します。

また経営陣は提出を受けた結果報告書に基づき会議を開いて協議を行い、今後のM&Aの方向性について議論します。

会議ではM&Aが抱えるリスクを中心に討議が行われ、リスクが経営にダメージを与えるほどの大きさならM&Aの中止が決められます。

またリスクが経営陣の想定内なら、相手とのM&A協議を続けることを前提に、リスクを軽減するため、買収価格にどう反映させるか、討議が重ねられます。

場合によってはリスクを買収価額に反映させるのではなく、「取引実行前提条件」「表明保証」あるいは「容認事項」などの文書化で解決を図ることもあります。 

デューデリジェンスの費用 

デューデリジェンスにかかる費用について説明します。

デューデリジェンスにかかる費用は基本的に買い手側企業が負担します。

なぜならデューデリジェンスは、M&Aの買い手側が売り手側の企業や事業を買収するため、その事前調査に関して発生する費用だからです。

ただしデューデリジェンスにかかる費用が、買い手側の負担する費用だからといって、直接買い手側が現金を準備して支払うとは限りません。

実務的にはM&Aの買収費もデューデリジェンスの実施コストも同じ買い手側の財布から支払う費用なので、買い手側としたらデューデリジェンス費用も買収に係る費用の一部として、買収費総額に含めて交渉します。

そういう点では、ある意味、デューデリジェンス費も売り手側が負担している費用ともいえます。 

費用相場 

結論から先に書けば、デューデリジェンスの費用に関しては相場というものは存在しません。

デューデリジェンスでは、実施する対象企業の規模や事業内容、デューデリジェンス種類、調査を外部委託する範囲や専門家の経験度等でかかってくる費用も大きく変動するからです。

大雑把な費用把握として、デューデリジェンスの総額で、中堅・中小企業で数百万円、大手企業で数千万円かかると捉えておけば十分でしょう。 

デューデリジェンスを行う際の注意点 

最後にデューデリジェンスを実施する際の注意点を3つ紹介します。 

適正な範囲で実施 

1点目の注意点は、デューデリジェンスは適正な範囲で行うということです。

M&Aの規模に対して調査の範囲を狭くしすぎると、後にM&Aの買収価格や統合後の経営計画に甚大な影響を与えてしまうリスクを見落とす可能性があります。

逆に調査範囲を広げすぎると、不必要な範囲まで調査してコストが跳ね上がり無駄な出費につながります。

デューデリジェンスはあくまで、対象企業や事業の規模、内容に応じて適正な範囲で行うのが肝心です。

優先順位を付けて実施 

2点目の注意点は、優先順位を付けて実施することです。

デューデリジェンスといえど、売り手買い手とも忙しく経営している中で行うので、時間とコストは有限です。

調査である点が納得できないからといって、ダラダラといつまでも続けるものではありません。

当初に決めたスケジュールに沿って、決めた調査期間内に優先順位を付けて集中して調査を行えば、M&Aの判断に必要な情報も十分得つつデューデリジェンスを終わらすことも可能です。

そうすればやみくもに調査範囲を広げず時間とコストも節約できて一挙両得になります。 

情報管理を徹底する 

3点目の注意点は、情報管理を徹底して行うことです。

デューデリジェンスは、売り手側の重要な企業情報を買い手側に提供して実施します。

いわば売り手の機密情報を渡されることになるので、買い手側はその取扱いには十分な配慮が必要です。

情報を得た買い手側の社員から、売り手側の情報が間違ってもM&Aの目的外で外部に漏れることなどあってはなりません。

機密情報が目的外に使用されたことが分かれば、買い手は当初に交わした「秘密保持契約」を盾に、売り手側から損害賠償を請求されるリスクがあります。

買い手としては、情報の取扱いに関して、社内の利用人数も最小限に絞り、外部で提携した専門家にも協力してもらい、情報漏洩のリスクをなくす努力を怠ってはなりません。 

まとめ 

本記事では、デューデリジェンスに関して、その目的や種類、手順や費用、実施の際の注意点など詳しく解説しました。

徹底したデューデリジェンスの実施が、適正な買収価額の把握、潜在リスクの排除や低下等を通じてM&Aの成功につながり、統合後も企業や事業の成長発展に資するといって過言でもないでしょう。

本記事も参考にぜひ適切なデューデリジェンスを実施して下さい。

著者
Runchaテクニカル分析チーム
チーム紹介ページ

日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト|4大監査法人出身者|TradingViewインジケーター開発者|EA開発者|

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監修者
山中康司

有限会社アセンダント

学歴: 慶應義塾大学卒業

著書: 『FXチャート分析マスターブック FX ボリンジャーバンド常勝のワザ』(2013年12月)

来歴: アメリカ銀行バイスプレジデント → 日興シティ信託銀行為替資金部次長を歴任。・金融コンサルティング会社アセンダント設立。金融リテラシー協会代表理事を務める。



所有者
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『ユーザーの新しい挑戦や、ワクワクの手助けができるサービス作り』をビジョンに、投資を始めたい人・よくわからない人の支えになるようなFX初心者ガイドや、トレード練習アプリを運営しております。
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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
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