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毎年100万円の金利収入「確定」のはずが…“高金利・トルコリラ”のトレードで〈損失300万円〉の49歳・会社員、失敗の原因は?

2023年10月05日 公開 
2023年10月19日 更新
金利100万円が損失300円に?高金利通貨の罠
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49歳・会社員の村井保さん(仮名)。アベノミクス相場で儲けた500万円を、“スワップポイント”ねらいで高金利通貨・トルコリラに投じました。初めは順調に金利収入を得ていたものの、トルコリラの急落によって結果的に300万円超の損失を被ることになりました。村井さんは、どこで何を間違えたのでしょうか。本稿では、高金利通貨の取り引きを行う際に押さえておきたいポイントについて解説します。

年間100万円の金利収入に「これは“勝ち確”かも」

建設業に勤める49歳の村井保さん(仮名)はアベノミクスをきっかけに株式投資を始め、500万円の元手を5年ほどで2倍の1,000万円にまで増やしたです。そんな村井さんが過去振り返る最大の失敗経験は、「高金利通貨」というキャッチフレーズに惹かれて始めた、FXのトルコリラ/円のトレードでした。

2017年当時のトルコリラ/円は約30円の水準で、1万通貨ロングする(1万トルコリラを円で買う)と1ヵ月で3,000円近くのスワップポイント(金利収入)を得ることができました。年間にすると3万円以上のスワップポイントを得られる計算で、レバレッジをかけなくても約10%の金利を得られる計算です。

しかも、少し前には60円ほどの水準だったところから30円近くまで大きく下落しており、「一国の通貨なのに、さすがに下がりすぎ。低レバだったら損はしないでしょ」という感覚もありました。そこで、村井さんは500万円をFX口座に入金、トルコリラ円を30万通貨ロングしたのです。1ヵ月で10万円近い金利が得られる計算で、年間では100万円以上「ただ持っておくだけ」でラクに副収入が得られるという算段でした。

相場の反発局面をねらってポジションを保有したこともあり、数ヵ月間は為替相場は横ばい~緩やかな上昇。金利収入も想定通り順調に積み上がっていき、村井さんは「これは“勝ち確”かも」と思ったそうです。

ところが、10月に入ると急に下落の勢いが強まり30円割れ。11月も下げは止まらず、史上最安値も更新して28円台へと突入します。「金利収入は入っているし、我慢すれば何とかなるだろう」と村井さんは放置を決め込んでいましたが、この下落は1年以上続き、金利収入をはるかに超えて損失は膨らんでいきました。

その上、2018年8月にはトルコショックによる大暴落まで起こり、20円を大きく割り込んだところでとうとう撤退を決断。このとき、金利収入は100万円超になっていましたが、急激なトルコリラ安によって売買損失は400万円以上、合算すると300万円の損失を被ってしまいました。

結局、村井さんはアベノミクスで得た利益の半分以上を失い、資産は1,000万円割れ。安易に始めた高金利通貨トレードは、最悪の結末で幕を閉じたのでした。

失敗原因は「金利」ばかりみていたこと

とくにFXを始めたての人にとって、新興国の高金利通貨というのは魅力的にみえるようです。その理由は、ポジションを保有するだけで“確実に”金利収入が得られるからです。しかし、村井さんが失敗したトルコリラの場合、国の経済が非常に不安定な状態で、トルコリラ自体の価値が大きく下がり続けていたという事情がありました。

高金利通貨は、たしかにポジションを保有しているだけで金利収入を得られます。しかし、いくら金利収入が得られたとしても、通貨の価値がそれ以上に下がってしまえば、単純にポジションを保有しているだけでは、トータルでは損失になる訳です。

スワップポイントだけをみて「何となくお得そうだから」という軽い気持ちで投資をしてしまったのが、村井さんの失敗原因だったといえるでしょう。

10年で10分の1の水準になったトルコリラ/円

ここで、2010年以降のトルコリラ/円のチャートをみてみましょう。

トルコリラ円の推移(2010年1月~)

2010年には約64円の水準でしたが、その後はほぼ下落一辺倒となっており、直近の2023年9月には10分の1以下の5円台という水準となっています。村井さんが取引を始めたのは2017年ですが、まさに落ちるナイフをつかむという危険な状態だったのです。

このチャートからは、「さすがにこれ以上は下がらないだろう」といった割安感だけで、安易にトレードすることの危険さが読み取れるのではないでしょうか。

続いて、トルコリラの価値に大きく関係する消費者物価(年間変化率)の推移もみてみましょう。

トルコ 消費者物価と政策金利の推移(2010年6月~)

2010年以降、トルコの消費者物価は概ね5~10%を推移しています。日本銀行の物価安定の目標が2%であることを踏まえると、高い水準であることが分かります。このような物価上昇の進行を抑えるために、トルコ中央銀行は高い政策金利を設定しており、トルコリラは高金利通貨となっているわけです。

さらにここ数年は極端なインフレが進行しており、2022年8月時点では、1年前と比較して物価が85%も上昇するという異常な状態です。現在は世界的にインフレが進行していますが、その中でもトルコの物価上昇は特に激しく、経済状況は非常に不安定といわざるを得ないでしょう。

物価が上昇するということは、同じ金額で買えるものが減るということであり、単位あたりの通貨価値が下落していることに他なりません。トルコリラの長期的な下落の背景には、トルコの高い物価上昇率があるといえそうです。

意外と難しい高金利通貨トレード

高金利通貨には、このような形で高いインフレ率を抑えるために中央銀行が高い政策金利を設定しているという事情があります。つまり、高い金利収入が得られやすい反面、通貨価値は下落しており、為替相場の変動によって売買損失が拡大しやすいことを頭に入れておくべきでしょう。

もちろん為替相場における下落が行き過ぎた際には、反転上昇のトレンドが発生することもあり、売買利益と金利収入の両方をねらえる「おいしい局面」もあります。しかし、高金利通貨のトレードは、「長期保有さえすれば金利収入で必ず儲けられる」といった単純なものではないことは、頭の片隅に置いておくべきです。

高金利通貨トレードで意識すべき5つのポイント

今回は、FXの高金利通貨トレードに挑戦して失敗した村井さんのエピソードを通じて、高金利通貨で陥りやすい落とし穴について解説してきました。最後に、高金利通貨の取引を行う際に意識しておきたいポイントを整理しておきます。

【軽い気持ちでポジションを持たない】
高金利通貨は保有するだけで高い金利収入が得られるメリットがありますが、同時に通貨の価値が下落しやすい側面もあります。金利収入だけに目を向けて軽い気持ちでポジションを持つと、大きな失敗につながる可能性があるので注意が必要です。

【長期的なトレンドを意識する】
通貨価値の下落リスクを確認する際は、為替相場における長期的なトレンドを確認することが大切です。長期的に下落トレンドが続いているのであれば、長期保有を続けると通貨価値の下落による損失が拡大することが懸念されます。利益を得るための戦略としては、反発するタイミングをねらってポジションを持ち、下落トレンドが再開する前にポジションを決済する形が基本となるでしょう。

【あらかじめ撤退シナリオも検討する】
高金利通貨は構造的に、下落が長期間にわたって継続することが十分に考えられます。仮に低レバレッジのトレードをしていても、こういった大幅な下落に巻き込まれると、損失が拡大してしまいかねません。もし、自身が想定していない相場展開となった際には、すぐに損切りの判断ができるように、あらかじめ撤退のシナリオも検討しておくことをおすすめします。

【経済ニュースをチェックする】
高金利通貨が高金利なのは、中央銀行が政策金利を高く設定しているからです。当局の政策次第では状況が変わることも考えられ、政策変更による影響も受けやすいところがあります。そのため対象国のニュースやレポートをチェックして、政治や経済の動向を細かく把握しておいたほうがいいでしょう。

テクニカル分析も活用する】
高金利通貨は長期保有をするだけで利益を挙げられるものではなく、適切なタイミングで取引することも重要です。そのタイミングを感覚的に判断すると、トレードの成否が運に左右されることになります。テクニカル分析を活用するなど、客観的な根拠に基づいてトレードを行うのが望ましいと考えられます。

高金利通貨の難しさを強調してきましたが、上手にトレードを行えば売買損益と金利収入の一石二鳥をねらえることもあります。高金利通貨に挑戦してみようと考えている人は、上記の5つのポイントを意識しながら、丁寧にトレードに取り組んでみましょう。

監 修
Runchaテクニカル分析チーム

トレード体験アプリ「Runcha」は、テクニカル分析チームが監修を行っています。これまでにFXおよび仮想通貨初心者向けの学習アプリを開発し、累計100万ダウンロードを突破。「Runcha」はデモトレードの進化版を目指し、トレード練習の概念を一新します。経験豊富な専門家の協力の下、分かりやすく正確な情報を提供しています。


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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
山中 康司 金融リテラシー協会 代表理事
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