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ボリンジャーバンド|移動平均線と標準偏差で相場の振れ幅を予測

2021年07月06日 公開 
2024年11月15日 更新
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ボリンジャーバンドとは

  • 移動平均線と標準偏差で構成されるインジケーター
  • 過去の価格のバラつきの大きさをバンド幅で表し、一定の確率で価格がバンド内に収まる特徴がある
  • バンドに対してのローソク足の動きによって、エントリーや手仕舞いのタイミングを決める

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ボリンジャーバンドの種類と計算式

MT4におけるボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドは上の画像のように、ミドルバンドを中心に上下に3本のライン、計7本のラインで構成されたインジケーターです。

上下3本のラインは±1~3シグマ(σ)と呼ばれます。一番移動平均線に近い上のラインを+1シグマと呼びます。2番目のラインを+2シグマ、3番目のラインを+3シグマと呼びます。移動平均線の下側のラインをそれぞれ-1シグマ、-2シグマ、-3シグマと呼びます。

±1~3シグマは、値動きがある状態ではそれぞれの距離は遠くなり、値動きのない状態ではそれぞれの距離は近くなります。値動きが大きくなるとバンド同士は広がり、値動きが少なくなると狭くなるという習性があります。

ボリンジャーバンドを構成するのは、

  • +3シグマ
  • +2シグマ
  • +1シグマ
  • ミドルバンド(単純移動平均線=SMA)
  • -1シグマ
  • -2シグマ
  • -3シグマ

です。

それぞれの計算式は、以下の通りです。

ボリンジャーバンドの計算式
  • +3シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 3 )
  • +2シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 2 )
  • +1シグマ = ミドルバンド + 標準偏差 
  • ミドルバンド(20SMA~25SMAのいずれか)
  • -1シグマ = ミドルバンド – 標準偏差 
  • -2シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 2 )
  • -3シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 3 )

標準偏差についてはこのあと分かりやすく説明するので、安心して下さい。

この”シグマ” は、上下動する値動きが収まりやすい範囲を示している線です。

シグマを算出するときの ”標準偏差” とは、対象データのバラつきの大きさを示す指標であり、統計を出す時によく使われる数値です。ボリンジャーバンドにおける対象データとは、単純移動平均線(SMA)を構成する終値です。
単純移動平均線を計算するための”終値”とは、例えば20SMAであれば終値20個、25SMAであれば終値が25個あることになります。

標準偏差の計算式

標準偏差 = √[{( 終値1 – 平均 )2 + ( 終値2 – 平均 )2 + … + ( 終値n – 平均 )2 } / n]

※各文字の意味は以下を参照
n:期間、終値m:期間内のm番目の終値、平均:期間内の終値の平均

標準偏差は、身近なところでテストや試験の偏差値にも使われています。

相場においては、1シグマを最小として、1シグマから2シグマ、2シグマから3シグマの範囲でローソク足が動いていくにつれて、値動きが大きくなっていることを表します。過去の値動きに比べて値動きの偏りが大きいとは、値動きが大きくなり、バラつきも大きくなっているということです。

過去の値動きに比べて値動きが大きいとは、これまで100~102円の範囲で動いていたものが105円まで動くような値動きを指します。
大きな値動きがあると、これまで推移していた範囲を超えた価格推移になります。
このように過去の価格推移の範囲と比べて、より広範囲の価格推移をするようになることを、バラツキが大きくなると表現します。

相場では “値動きが大きいとき = 大きな値幅を獲得できるチャンス” になります。

ボリンジャーバンドの肝はこの”標準偏差” です。

ボリンジャーバンドを使いこなすには ”標準偏差” が何であるかを理解し、それが相場の何を表しているのかを正確に理解することが重要です。

次で、標準偏差の計算式の意味について解説していきます。

この計算値を理解するには、単純移動平均線(SMA)への理解が不可欠ですので、不安な方は下記より確認してみてください。

移動平均線

  • 特定期間の平均値を結んだ線で、相場が滑らかに見えるようになる
  • 現在買いが強いか売りが強いかを判断できる
  • テクニカル分析の基礎であり、他のテクニカル分析と組み合わせることで効果増

ボリンジャーバンドの計算式の意味

前の項でも紹介しましたが、ボリンジャーバンドは

  • +3シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 3 )
  • +2シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 2 )
  • +1シグマ = ミドルバンド + 標準偏差 
  • ミドルバンド(一般的には20SMA~25SMA)
  • -1シグマ = ミドルバンド – 標準偏差 
  • -2シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 2 )
  • -3シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 3 )

から構成されています。

まず始めに、ボリンジャーバンドの基準となるのは、

ミドルバンド(一般的には20SMA~25SMA)

です。

一般的に20から25のSMAを設定値とします。

ミドルバンドよりローソク足が下にある場合は売り優勢、上にある場合は買い優勢、ミドルバンドとローソク足がもつれ合っている場合はレンジ相場、というように、中期のトレンドをざっくりと把握するために使われます。

続いて、

  • +3シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 3 )
  • +2シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 2 )
  • +1シグマ = ミドルバンド + 標準偏差
  • -1シグマ = ミドルバンド – 標準偏差 
  • -2シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 2 )
  • -3シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 3 )

について紹介していきます。±●シグマと表されるものは、ミドルバンドの上下に引かれるバンド(線)です。

ボリンジャーバンドでは “標準偏差” を用いて計算し、バンドが引かれています。

標準偏差は、以下の手順で求められます。

バンドの求め方

ボリンジャーバンドは、中央にSMAがあり、その上下に表示されるバンド(UPバンドとLOWバンド)あります。上下のバンドは、SMAを元に標準偏差を算出します。

そもそも、標準偏差とは “対象データのバラつきの大きさを示す指標” でした。

“偏差” 値について思い出してみてください。難しいテストで高得点を取ると、偏差値は高くなります。皆の点数が低い中で自分だけ点数が高いということになるので、バラツキが大きい状態です。
逆に簡単なテストで高得点を取れても、偏差値は高くはなりません。テストが簡単なので、皆も点数が高い状態です。自分が高い点数をとっても点数のバラツキはありません。皆揃って高得点となります。
これを相場に置き換えると、値動きが穏やかなときに大きな値動きをするというのは、皆点数が低い中で自分だけが高いのと同じ状態です。それがボリンジャーバンドの幅として現れます。値動きがない相場で大きな値動きになると、ボリンジャーバンドは大きく反応しますが、もともと値動きが激しい相場のときに大きな値動きをしてもボリンジャーバンドの反応は薄くなります。

ボリンジャーバンドでいうデータとは、SMAを構成する数値を使って標準偏差を求め、バンドを表示させます。

以下では、そのバンドの求め方を順を追って説明しました。

標準偏差の計算方法

わかりやすいように期間は5で考えます。
期間が5ですので、期間内の終値は5つあります。

① 5つの終値を合計する

② ①を5で割って平均を出す。(これがSMA)

③ 5つの終値と平均との差を出す

④それぞれの差を2乗して合計値を出す

⑤合計値を5で割る

⑥ ⑤の値を平方根( “√” )で計算したものが標準偏差

となります。

このように、元のデータの数値と単位がそろった「データのばらつきの大きさ」を求めるために、

“(3)各データと平均との差を”

 → “(4)2乗したものの合計を”

  → “(5)データの総数で割った上で”

   → “(6)平方根を利用したもの”

と計算していきます。

ボリンジャーバンドにおいては、“各データ” とは “移動平均線の計算で使用する終値” になります。

文章だけではわかりづらいと思うので、具体的な数値を使って計算します。

例えば、ドル円の日足チャートで

100円に位置する5SMA(103円, 101円, 96円, 98円, 102円)

の平均線があったとします。(ボリンジャーバンドには一般的に20~25SMAが使われますが、ここでは計算を簡素化するために5SMAを使います)

この時の合計値は、

・( 103 + 101 + 96 + 98 + 102 ) = 500
= 500

です。

①の数値を5でわると、

・ 500 ÷ 5 = 100
  → = 100

となります。

続いて、5つの終値(103円, 101円, 96円, 98円, 102円)との差を計算すると、

・103 – 100 =  3
・101 – 100 = 1
・96 – 100 = -4
・98 – 100 = -2
・102 – 100 = 2
 →= ( 3, 1, -4, -2, 2 )

となります。

そして、それらの数値を2乗すると

・3 × 3 = 9
・1 × 1 = 1
・( -4 ) × ( -4 ) = 16
・( -2 ) × ( -2 ) = 4
・2 × 2 = 4
 → 9 + 1 + 16 + 4 + 4 = 34
 →= 34

これを5で割ると、

34 ÷ 5 = 6.8
 →⑤  = 6.8

最後に、⑤の数値を平方根で計算すると

√6.8 = 2.60768…..
 2.61

と求められ、この5SMAにおける標準偏差は “2.61” となります。

したがって、それぞれのバンドは、

・+3シグマ = ミッドバンド + ( 標準偏差 × 3 )

 → 100 + ( 2.61 × 3 ) = 107.83

・+2シグマ = ミッドバンド + (標準偏差 × 2)

 → 100 + ( 2.61 × 2 ) = 105.22

・+1シグマ = ミッドバンド + 標準偏差

 → 100 + 2.61 = 102.61

・-1シグマ = ミッドバンド – 標準偏差 

 → 100 – 2.61 = 97.39

・-2シグマ = ミッドバンド – ( 標準偏差 × 2 )

 → 100 – ( 2.61 × 2 ) = 94.78

・-3シグマ = ミッドバンド – ( 標準偏差 × 23 )

 → 100 – ( 2.61 × 3 ) = 92.17

に位置するということになります。

そして、ボラティリティが大きくなればなるほど、バンド同士の距離も計算上離れていきます。

例えば、先ほどよりボラティリティが大きくなった相場、

100円に位置する5SMA(110円, 104円, 97円, 94円, 95円)

では、


・110 – 100 = 10
 →10 × 10 = 100
・ 104 – 100 = 4
 → 4 × 4 = 16
・97 – 100 = -3
 → ( -3 ) × ( -3 ) = 9
・ 94 – 100 = -6
 → ( -6 ) × ( -6 ) = 36
・ 95 – 100 = -5
 → ( -5 ) × ( -5 ) = 25
( 100 + 16 + 9 + 36 + 25 ) ÷ 5 = 37.2
√37.2 = 6.0991…..
標準偏差 ≒ 6.1 

この5SMAにおける標準偏差は “6.1” になりました。

よって、

・+3シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 3 )

 → 100 + ( 6.1 × 2 ) = 118.3

・+2シグマ = ミドルバンド + ( 標準偏差 × 2 )

 → 100 + ( 6.1 × 2 ) = 112.2

・+1シグマ = ミドルバンド + 標準偏差

 → 100 + 6.1 = 106.1

・-1シグマ = ミドルバンド – 標準偏差 

 → 100 – 6.1 = 93.9

・-2シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 2 )

 → 100 – ( 6.1 × 2 ) = 87.8

・-3シグマ = ミドルバンド – ( 標準偏差 × 3 )

 → 100 – ( 6.1 × 2 ) = 81.7

の値に、それぞれのバンドが位置することになります。

このように、ボラティリティが大きくなるとバンド同士の距離も開いていくことが理解いただけましたでしょうか。

まとめると、ボラティリティのない相場では、

バンド同士の距離が近い = 標準偏差の値が小さい = 単純移動平均線の期間内の数値の差が小さい

ボラティリティの大きい相場では、

バンド同士の距離が遠い = 標準偏差の値が大きい = 単純移動平均線を期間内の数値の差が大きい

と言い換えることができます。

シグマについて

シグマと数値の関係

標準偏差で示したシグマの範囲内に、正規分布であれば一定の確率でおさまるという特性があります。

相場に置き換えると、±2シグマを外れて終値が確定した場合には異常値と判断でき、いずれは高確率でバンド内へ戻ってくることが期待できるので、逆張りを狙うという考え方ができます。

ただ、先述したようにここでは “正規分布” であれば、という前提条件が必須となります。

正規分布とは、次の画像のように釣鐘型で左右対称の形をしており、平均付近が一番高く平均から離れていくにつれて、緩やかに低くなっていくグラフのことです。

正規分布の場合に、シグマ内に数値が収まる確率

一度はこのような絵を見たことがある方もいるのではないでしょうか。

これをボリンジャーバンドに置き換えると、SMAの期間内の終値が正規分布する場合は、

  • ±3シグマ内に数値が収まる確率 = 99.73%
  • ±2シグマ内に数値が収まる確率 = 95.4%
  • ±1シグマ内に数値が収まる確率 = 68.3%

に収まるという意味になります。

しかし、SMAの期間内の終値は、綺麗な正規分布にはなることはまずありません。

例えば、強い上昇トレンドが発生し、

ドル円1時間足の終値 = 100円→100.5円→103円→104円→105円

と上がっていった相場があったとします。

その場合の平均値は、

( 100 + 100.5 + 103.5 + 104+ 105 ) ÷ 5 = 102.6

となります。正規分布であれば、平均値 “102,.6” 周辺に数値が分布するはずですが、平均値 ”102.6” より下に “100” “100.5”、平均値 ”102.6” より上に ”103.5” “104” “105”  というように、平均値から大きく外れたところに数値が位置することになります。

不安定な相場においては、このようなことは頻繁に起こります。

今は計算しやすくするために5SMAを例に出していますが、20SMAや25SMAでも同様のことが言えます。

つまり、強いトレンド発生時には単純移動平均線を構成する数値は正規分布にはならず、偏った数値になることが多いのです。

相場において、単純移動平均線の値が平均を境にバランスよく分布することは、まずありません。

従って、一方的にローソク足が+3シグマを超えたところで確定したので逆張りで売り、という安易な取引方法は相場では通用しないということです。

ですが、例外的に、高値と安値を行ったり来たりするレンジ相場においては、正規分布に近い分布になることもあります。

ボリンジャーバンドの売買ポイントの項で詳しく説明しますが、レンジ相場での±2シグマ にタッチした際の逆張りは、有効なものとなりえます。

後の項では、ボリンジャーバンドをどう相場で使えばいいのか、を解説してきます。

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ボリンジャーバンドを学べるオススメ本

『ボリンジャーバンド入門』のAmazon公式サイトはこちら

ボリンジャーバンドについて詳しく専門的に勉強したいなら、『ボリンジャーバンド入門』を読んでみましょう。

これはボリンジャーバンドの生みの親であるジョン・A・ボリンジャー氏による解説書です。

2001年に米国で出版され、現在12か国語に翻訳されています。

まさに世界中のボリンジャーバンド使いにとっての必読書といえるでしょう。

この本には、開発者だからこそ語れるボリンジャーバンドの正しい使い方が載っています。

さらには、ボリンジャー氏が長年の経験を通じて導き出した、トレーダーにとって重要なマインドを知れるのも当書の魅力です。

トレード技術向上につながる情報が盛りだくさんの1冊なので、この本を読めば、初心者は中級者に、中級者は上級者にレベルアップして、より大きな利益を狙えるようになるでしょう。

ボリンジャーバンドを学べるYouTube動画

ボリンジャーバンドについて動画で見たいなら、ヒロセ通商の『ボリンジャーバンドで最も収益を上げる方法を伝授!』がオススメです。

ボリンジャーバンドの考案者であるジョン・ボリンジャー氏とも親交がある山中康司氏が、ボリンジャーバンドについて分かりやすく解説してくれます。

売買ポイントも実際のチャートで説明してくれるので、この動画を見れば、すぐにボリンジャーバンドを使いこなせるようになるでしょう。

ボリンジャーバンドの一般的な使い方

ボリンジャーバンドの一般的な使い方

上の画像は、ボリンジャーバンドの見る際のポイントを示しています。

ボリンジャーバンドを見るときは、バンドの傾きとバンド同士の距離を見ることが重要です。

ボリンジャーバンドの形を見ると、相場の状況がわかります。

  • バンド同士の距離は近く横ばい => ボラティリティ(値動きの幅)のない相場
  • 閉じていたバンドが開き始める => トレンドの出始め
  • バンドの同士の間が徐々に開き始める(エクスパンション) => トレンドの勢いが出て、一方向に走り始める
  • トレンドと反対側のバンドが閉じ始める(スクイーズ) =>トレンドの勢いがなくなる
  • バンド同士の距離は近くなり、横ばいへ => トレンドが終わりに向かう

トレンドの段階によってバンドの形が変わっていきます。

ボリンジャーバンドは、上記の考え方に沿って見るようにしましょう。

ボリンジャーバンドのパラメータ設定値

Trading Viewでのボリンジャーバンド設定画面

上の画像は、TradingViewのボリンジャーバンドにおける設定画面です。

複雑でややこしいイメージを持たれがちなボリンジャーバンドですが、設定が必要な値は下記2つのみです。

  • 標準偏差の値(±1シグマ~3シグマ)
  • SMAの期間(20SMA~25SMAを使うことが一般的)

SMAの期間は、一般的に20SMA・21SMA・25SMAのいずれかです。数値が近いので、どの期間に設定しても単純移動平均線の形はさほど変わりません。どの値でも問題ないと言えるでしょう。

ボリンジャーバンドが示す売買ポイント

ボリンジャーバンドとトレンドが転換したチャート

ボリンジャーバンドによる、売買ポイントは2つです。

  • トレンドの起点で、±3シグマをブレイクした時の順張り→トレンド相場
  • レンジ相場で±3シグマをタッチした時の逆張り→レンジ相場

順張りは±3シグマをブレイクしたところ、逆張りはレンジ相場で±3シグマにタッチしたところ、というように表裏一体の戦略です。±3シグマブレイクでのトレンド起点と判断しエントリー、片や±3シグマをタッチしての反発を狙う手法です。

ボリンジャーバンドでのエントリーの際には、現在の相場状況を見極めることが重要となります。

それぞれ詳しく解説していきます。

トレンドの起点で、±3シグマをブレイクした時の順張り

トレンドの起点で、±3σをブレイクした時の順張り

ボリンジャーバンドで最もポピュラーなのがトレンドに乗った順張り手法で、発案者のジョン・ボリンジャーもこれを推奨しています。

具体的には、ローソク足の終値が±3シグマをブレイクした際、超えた方向に順張りエントリーを行うといった形です。

なお今回は±3シグマを基準にして解説しますが、±2シグマを使うことも多く、ジョン・ボリンジャー氏は±2シグマを推奨しています。

パラメータや分析対象によって適切な基準は変わることも考えられるので、バックテストを行いながら柔軟に調整するといいでしょう。

例えば上のチャート画像の場合、赤丸で示したところがエントリーポイントです。

トレンドの起点を狙った手法であり、トレンドが発生した際には、バンド同士がエクスパンション(バンド幅が広がる)して、±3シグマに沿ってローソク足が推移する “バンドウォーク” をしながらトレンド方向に強く走り始めます。

そして、スクイーズ(バンド幅が狭い)している間は力を溜めている状態であり、スクイーズしている期間が長いほど、次のトレンドは力強いものになる傾向があります。

トレンド形成後、やがてトレンドの勢いが落ち始め、ミドルバンドをタッチしたところで手仕舞いを行うのがセオリーです。

トレンドのバンドウォーク中こそが、相場の中でもっとも利益の取れる期間です。

トレンドの起点に乗れた際は

“±3シグマブレイク→ミドルバンドにタッチ”

のトレードでも十分な利益を取れるでしょう。

しかし、この手法の注意点もあります。

それは、長い時間足のトレンドも同方向に向いていないと、すぐにレンジ内に戻ってダマしになってしまうことがある、ということです。

例えば、1時間足(下の画像2つ目)で下降トレンドを形成している中で、5分足(下の画像1つ目)で+3シグマにブレイク。

しかし、長いトレンドを築くことなく、すぐにミドルバンド付近へ戻ってしまった。

流れに逆らった売買サイン①
流れに逆らった売買サイン②

このように、長い時間足に逆らった短い時間足での±3シグマタッチは、すぐに逆行もしくは短いトレンドとして終わることが多いです。

この手法を使うときは、長い時間足に逆らった動きになっていないかを見極めることで、ダマしを回避する可能性を上げることができます。

また、利確のポイントとして、必ずしもミドルバンドへのタッチまで待つ必要はありません。

ボリンジャーバンドは、

トレンドの勢いがなくなる => トレンドと反対側のバンドが閉じ始める(スクイーズともいう)

といった特徴があります。バンドの反対方向が閉じ始めたときは、トレンドの勢いが陰り始めたときです。

そのあとの伸びについていけなくなる可能性もありますが、一つの手仕舞いのポイントとして考えても問題ありません。

レンジ相場で±3シグマをタッチした時の逆張り

レンジ相場では成功率が高い手法

この手法は、±3シグマを抵抗として考えます。

レンジ相場を形成しているときに、±3シグマにタッチした際にミドルバンド方向に逆張りを行い、手仕舞いのポイントはミドルバンドにタッチしたときです。±3シグマ→ミドルバンド間の利益を狙った手法です。

レンジ相場では、上の画像の通り成功確率が高いのがわかります。

レンジ相場においては、単純移動平均線の期間内の終値は正規分布に近くなりやすいです。

レンジ相場では±3シグマをブレイクして確定した場合には異常値と判断でき、再びレンジ内に戻ってくることが多くなると考えられます。

この手法の注意点は、反発せずレンジ内に戻ってこなかった際に、早めに損切りをしなければならないことです。

エントリー後のローソク足を注視して、値動きを見守る必要があります。レンジ相場が終わった場合は、速やかに損切りをする必要があります。

たまにしかチャートを見られない方には、あまり向いていない手法です。

そして、この逆張り手法は発案者のジョン・ボリンジャー自身も推奨していません。

ボリンジャーバンドを用いた手法は、あくまで順張りのみと述べています。

この手法を使う際は、レンジ相場かつ、反発せずにトレンドを作り始めた場合は、早めに損切りすることが求められます。

ボリンジャーバンドの注意点、懸念点

ボリンジャーバンド使用時の注意点、懸念点は全部で2点あります。

  • 現在のトレンドを見極める 
  • 重要指標発表時

それぞれを詳しく解説していきます。

現在のトレンドを見極める

きれいな上昇トレンド

ボリンジャーバンドを使う上で、現在がどのようなトレンド状態であるか確認することは、もっとも重要です。

ボリンジャーバンドの手法では、

  • トレンドの起点を示唆するのであれば、±3シグマをブレイクしたところで順張り
  • レンジ相場であれば±3シグマにタッチしたところでの逆張り

というように正反対に近い使い方をします。トレンドを読み間違えてしまうと、手法と逆行したエントリーになってしまいます。

トレンドは、単純移動平均線に対してローソク足が上で推移している場合は上昇トレンド、下で推移している場合は下降トレンド、横ばいで単純移動平均線を中心に右往左往している場合はレンジ相場、とシンプルに判断することができます。

例えば上の画像にあるようなチャートであれば、きれいな上昇トレンドを描いていることがわかります。

そして、順張り手法のエントリーの場合は、他のテクニカル分析と併せて使い、より多くの根拠に基づき行うと精度の高いエントリーになります。例えば下の画像のように、MACDのMACDラインとシグナルラインとのゴールデン・デッドクロスは近いタイミングで発生することがあるので、注視してみるのも良いですね。

売買サインが複合して発生

また、先述したように長い時間足でもトレンドが出ているかどうかを確認することも重要です。例えば、エントリー後に短い時間足で深めにレートを戻してきても、長い時間足には逆らえずに跳ね返され、再びトレンド方向に走り始めることも多くなります。

逆張り手法でのエントリーの場合は、直前の相場がどのようなトレンドを形成していたかを確認することが重要です。レンジ相場であればSMAは正規分布に近くなり、

  • ±3シグマ内に数値が収まる確率 = 99.73%
  • ±2シグマ内に数値が収まる確率 = 95.4%
  • ±1シグマ内に数値が収まる確率 = 68.3%

計算通りに手法が機能しやすくなります。

直前に強いトレンドが発生しているのに、いきなり逆張りをするのはNGです。順張り手法でも説明したように、強いトレンド時はバンドは開き高値・安値を更新しながら、±3シグマに沿ってローソク足が動いていきます。

グイグイと伸び続けるトレンドの天井を掴むのはギャンブルに近く至難の業です。トレンドの勢いが落ちてバンド同士がスクイーズしてきたことを確認し、ローソク足がミドルバンド付近を行ったり来たりをし始めたことを確認してから、エントリーを行いましょう。

さらに、逆張り手法では、利確・損切りはこまめに行うことがセオリーです。損切りのタイミングが遅れると、予想以上の損失を抱える可能性があります。

利確は欲張らず、損失は早めに切る、という意識を持ちトレードをしていきましょう。

重要指標発表時

重要な指標発表時の画像

重要な指標の発表時には、通常通りの値動きにならないことがあります。指標発表には様々なものがありますが、押さえておくべき指標発表は、

  • FOMCによる景況判断と政策金利についての発表(年8回)
  • 雇用統計の発表(毎月1回、12日を含む週から3週間後の金曜日)

の2つのみです。

あらかじめ上記2つの日程は発表されているので、取引を避けるべき時間として把握しておくことは可能です。

重要指標発表時は、短期間で利益を狙う大口取引先によって相場が荒れがちです。

テクニカル分析に基づいて取引をする場合には、避けた方が良い時間帯です。

ボリンジャーバンドの成り立ち

発案者ジョン・ボリンジャーの似顔絵

ボリンジャーバンドは、ジョン・ボリンジャーによって1980年代に考案されました。当時はファンダメンタルズ分析が主流で、テクニカル分析は少なく、移動平均線やエンベロープを用いた固定幅のバンドでの分析程度しかありませんでした。ジョン・ボリンジャーは、ボラティリティを正確に反映できるバンドがあれば、相場への優位なアプローチができると考え、4年の歳月をかけボリンジャーバンドを完成させました。

その後、2001年にボリンジャーバンドを詳しく解説した「Bollinger on Bollinger Bands」を出版し、以来多くのトレーダーに読まれ続けるベストセラーとなっています。

ボリンジャーバンド類似のインジケータ

ボリンジャーバンドと似たエンベロープを表示したチャート

ボリンジャーバンドに似ているインジケーターとして、エンベロープ(上の画像)があります。

エンベロープもボリンジャーバンドと似た形をしています。移動平均線の上下に1本~4本のバンドが並ぶ形をしており、それぞれのバンドに対してのバンドウォークを狙った順張りと、レンジ相場での反発を狙った逆張りを狙うという意味では使い方に関しても同じです。

エンベロープとボリンジャーバンドの決定的な違いは、

エンベロープはバンド同士の距離は一定 なのに対し、ボリンジャーバンドはバンド同士の距離は変わる

ということです。

ボリンジャーバンドにはボラティリティの概念があります。過去のボラティリティ幅によってバンドが閉じたり開いたりするので、トレンドの強弱を把握することに優れています。

エンベロープ

  • 移動平均線の上下に、一定幅で乖離させた複数線を表示させたテクニカル分析
  • 移動平均線から、現在どれくらい乖離しているかを可視化したもの
  • 大きな値動きがあってもいずれは移動平均線に戻る、というチャートの習性を利用するためのインジケーター

スーパーボリンジャーについて

スーパーボリンジャーを表示させたチャート

また、ボリンジャーバンドの応用として、スーパーボリンジャー(上の画像)というテクニカル分析が存在します。

ボリンジャーバンドとは、

  • 必ず±1~3シグマまである(→ボリンジャーバンドは±1~2シグマでも使われる)
  • 遅行線(遅行スパン)がある

といった点で異なります。

遅行線とは、現在の値動きから21本もしくは26本分後ろにずらした線のことを言います。スーパーボリンジャーは、遅行線を用いて現在が買い・売り相場であるかを判断しやすくしたものです。

この遅行線はボリンジャーバンドの順張り手法と相性が良いです。ボリンジャーバンドの±2シグマをブレイクと遅行スパンのローソク足の上・下抜けの転換サインが重なった際には、大相場の起点を捉えられることもあります。

ただ、遅行線とローソク足の上・下抜けの判断が難しいことから、扱いが難しいとも言われるテクニカル分析です。

一般的には、

・ボリンジャーバンド + ミドルバンド(単純移動平均線)

が使われることがほとんどです。まずは基本のボリンジャーバンドを自分の中に定着させ、使いこなすことから始めましょう。

ボリンジャーバンドの豆知識

エンベロープの記事で書きましたが、エンベロープでは移動平均線のSMA・EMA、どちらを使用しても問題ありません。しかし、ボリンジャーバンドはEMAではなく、必ずSMAを使わなければなりません。

なぜかというと、標準偏差では単純移動平均線の計算式を基本としているからです。

EMAは、

“n” EMA = 1期間前のEMA + { ※平滑化指数 × ( 終値 – 1期間前のEMA )}

のように、“1期間前のEMA”  “終値” ”平滑化指数” の3つによって求められます。

標準偏差の計算(5SMAの場合)は、

① 5つの終値を合計する

② ①を5で割って平均を出す。(これがSMA)

③ 5つの終値と平均との差を出す

④それぞれの差を2乗して合計値を出す

⑤合計値を5で割る

⑥ ⑤の値を平方根( “√” )で計算したものが標準偏差

であり、SMAの数値をもとに計算します。

ボリンジャーバンドの移動平均線をEMAとしてしまうと、標準偏差との整合性が取れなくなってしまいます。

なんとなくEMAの方が複雑なので、より精度の高い分析ができるのではないか、と考える方もいるかもしれませんが、ボリンジャーバンドにおいては必ずSMAを使う必要があります。忘れずに覚えておきましょう。

ボリンジャーバンドの用語

  • ミドルバンド(ミッドバンドやミドルラインとも呼ばれる)
  • ±1~3シグマ(σ)
  • ボラティリティ
  • 標準偏差
  • 正規分布
  • スクイーズ
  • エクスパンション
  • バンドウォーク
  • Bandwidthチャート
  • %bチャート

Bandwidthチャートと%bチャートについて

Band widthチャート
%bチャート

Bandwidthチャート(上の画像1つ目)と%bチャート(上の画像2つ目)は、ボリンジャーバンドをより分析しやすくしたチャートです。

あまり使われていませんが、ボリンジャーバンドの数値をわかりやすく表示します。

Bandwidthチャートは、バンド同士の幅をグラフで表したものです。

相場はトレンド→レンジ相場を繰り返しながら進んでいきます。

BandWidthがバンド幅を表すことで、現在のボラティリティがどれくらいかを視覚的に確認できるようになります。

%bチャートは、バンド内でローソク足がどの位置にあるかを示します。

下限のバンドを0%、ミドルバンドを50%、上限のバンドを100%で表します。

ボリンジャーバンドでは、時の上限・下限を超えることもあるので、0%以下や100%以上の数値を示すこともあります。

%bチャートでは次の画像のように、ローソク足が下げているのに%bチャートが上げているというような、ダイバージェンスが発生することもあります。

%bチャートにおけるダイバージェンス

このダイバージェンスは他のテクニカル分析同様に、トレンドの勢いが落ちていると判断でき、エントリーの根拠としても使うことができます。

ボリンジャーバンドが使えるFX/証券会社/仮想通貨取引所

ボリンジャーバンドは、以下のFX会社、証券会社、仮想通貨取引所で使用できます。

FX会社

  • DMM FX
  • GMOクリック証券
  • 外為オンライン
  • LINE FX
  • SBI FXトレード

証券会社

  • SBI証券
  • 楽天証券
  • 松井証券

仮想通貨取引所

  • bitFlyer
  • Coincheck
  • GMOコイン
  • DMM Bitcoin

ボリンジャーバンドはMT4やMT5で使えるか

MT5の表示

ボリンジャーバンドはMT4やMT5でも使うことができます。

MT4で使う場合は、上の画像のように「メニューバーの ”挿入” → “インディケータ” → ”トレンド” → “Bollinger Bands”」からチャートに表示させることができます(MacのPCの場合)。
上記の設定では、ボリンジャーバンドは1つしか表示されません。2シグマや3シグマを表示させたい場合は、偏差を変更して上記の手順を繰り返してください。

設定時のパラメーター欄で、偏差の値、SMAの設定値の変更、シグマの線の太さや色の変更なども可能です。

以上、当記事ではボリンジャーバンドについてを解説してきました。

ボリンジャーバンドでは、現在のトレンドの強さやトレンドが終わるポイントを示します。

また、エントリーにも使うことができるツールでき、世界中のトレーダーに使われているテクニカル分析です。

ボリンジャーバンドについて理解を深め、実際の相場で使いこなせるようになりましょう。

著者
Runchaテクニカル分析チーム
チーム紹介ページ

日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト|4大監査法人出身者|TradingViewインジケーター開発者|EA開発者|

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監修者
山中康司

有限会社アセンダント

学歴: 慶應義塾大学卒業

著書: 『FXチャート分析マスターブック FX ボリンジャーバンド常勝のワザ』(2013年12月)

来歴: アメリカ銀行バイスプレジデント → 日興シティ信託銀行為替資金部次長を歴任。・金融コンサルティング会社アセンダント設立。金融リテラシー協会代表理事を務める。



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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
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