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テクニカル&ファンダメンタルズ|それぞれの基礎概念と分析方法

2023年02月08日 公開 
2024年11月15日 更新
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要するに、相場分析方法とは

  • 相場分析には、テクニカル分析とファンダメンタルズの異なる2つのアプローチがある。
  • 2つの方法のいずれかが絶対的に優れている、ということはない。
  • 個人投資家はテクニカル分析を基本に考える。

最強のテクニカル分析は?

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2つの相場分析方法

相場分析方法は、大きく以下の2つの方法に分かれます。

  • テクニカル分析
  • ファンダメンタルズ分析

1つ目のテクニカル分析とは、過去の値動きから方向性や過熱感、パターンなどを見極めて、将来の相場展開を予測していく分析方法です。

これに対して2つ目のファンダメンタルズ分析は、分析対象に関連する基礎情報からあるべき価格を把握し、現在の価格とのズレから今後の展開を予測する分析方法です。

なお、基礎情報とは例えば株式であれば企業の業績などが挙げられ、「これぐらい利益をあげている企業だから、あるべき株価はこれぐらいだろう」といった分析を行うイメージを持つといいでしょう。

この後、それぞれの分析方法について詳しく解説していきます。

相場分析方法は2種類

それぞれの分析方法は、値動きに注目するのか、分析対象の価値に注目するのか、分析のアプローチ方法が大きく異なります。

どちらが優れているというものではありませんが、それぞれの概要を理解した上で、自分に合った方法を選べることが大切と言えるでしょう。

この記事では、テクニカル分析とファンダメンタルズの基本をそれぞれ解説した上で、違いや特徴を理解して、使い分けられるように解説していきます。

基本的な内容ですが、意外と抜けていることのある部分なので、知識が曖昧な人はぜひ最後までチェックしていただければと思います。

テクニカル分析

では、まずはテクニカル分析について詳細に見ていきましょう。

テクニカル分析に欠かせないチャート

テクニカル分析は、過去の価格を基に分析する手法です。価格に加え、出来高、建玉も含まれる場合もあります。

一般的にテクニカル分析という場合は、値動きを視覚的に表現したチャートを基に行います。日本では、上図のようなローソク足チャートと呼ばれるチャートがよく使われます。

このチャートから、よく現れるチャートの形状や過去の傾向に当てはめて将来を予測をするものをテクニカル分析といいます。

その際、分析においては、過去の価格情報に基づいて所定の計算を行い算出した値をチャート上に表示した、インジケーターやテクニカル指標と呼ばれるものがよく使用されます。

インジケーターの例としては、過去一定期間の価格の平均値を取った移動平均線や、過去一定期間における変動幅合計における上昇幅合計の割合を取ったRSIなどがあります。

こういったものを使用しながら値動きに見られる傾向を分析して、予測の精度を高めていきます。

テクニカル分析の理論的根拠

テクニカル分析の元祖としてダウ理論という相場理論が知られていますが、その基本原則の1つには以下のような言葉があります。

平均は全ての事象を織り込む

ここで言う「平均」は市場の価格のことで、この基本原則は「全ての関連情報を踏まえた上で、市場において価格が形成されている」ということを意味しています。

つまり、値動きを表現するチャートを分析すれば、全ての関連情報を踏まえた分析ができるというわけです。

この基本原則は、テクニカル分析の理論的根拠ともなっていると言えるでしょう。

テクニカル分析の種類

テクニカル分析は、そのアプローチ方法によりいくつかに分類することができます。

ここでは、主要な分類として以下の4つを挙げておきます。

  • トレンド分析
  • オシレーター分析
  • チャートパターン分析
  • 体系的な相場分析理論

それぞれ、簡単に見ていきましょう。

トレンド分析

トレンド分析は、相場における値動きの方向性(トレンド)を把握することで、将来の相場展開を予測していく分析方法です。

この分析を行う際には、基本的にはトレンドが継続していくという前提のもとに、捉えたトレンドに対して順張りトレードを行うことになります。

先ほど紹介した移動平均線は、トレンド分析で使用される最も代表的なインジケーターです。

オシレーター分析

オシレーター分析は、相場における買われ過ぎ、売られ過ぎといった過熱感を把握することで、将来の相場展開を予測していく分析方法です。

この分析では過熱感が高まった相場は反転が近いと考えて、それまでのトレンドに対して逆張りトレードを狙うのが基本となります。

先ほど紹介したRSIは、オシレーター分析で使用される代表的なインジケーターの1つです。

チャートパターン分析

チャートパターン分析では、過去の相場の値動きそのもの(チャートの形状)に注目して、過去によく現れるパターンに当てはめて、将来の相場展開を予測していきます。

つまり、「これまでそうだったから、次も同じようなチャートパターンを描く可能性が高い」と考えるわけです。

基本的にインジケーターは使わず、チャートの見た目から判断できるので、初心者にとっても分かりやすい分析手法と言えるかもしれません。

体系的な相場分析理論

上記の他にも、テクニカル分析には、著名なアナリストやトレーダーが体系的にまとめた相場分析理論もあります。

代表的なものとしては、例えばテクニカル分析の元祖とも言われるダウ理論があります。

また、世界大恐慌を予測した伝説的トレーダーであるウィリアム.D.ギャンの手法がまとめられているギャン理論も有名です。

こういった相場分析理論を学ぶことは、相場の本質を理解する上で非常に有用と言えるでしょう。

このように、テクニカル分析にはさまざまな方法がありますが、以下の記事ではテクニカル分析全体を横断的に紹介しています。

テクニカル分析の概要が見えてくると思いますので、気になる人はぜひチェックしてみてください。

テクニカル分析のメリット・デメリット

テクニカル分析の概要を見てきましたが、最後にメリットとデメリットを整理しておきましょう。

テクニカル分析のメリット

テクニカル分析のメリットは、以下のような点が挙げられます。

メリット
情報が平等に手に入る 初心者でも比較的分析がしやすい 短期的な変動についても分析できる 具体的なトレードポイントが分かる

上記のそれぞれについて、理由とともに見ていきましょう。

情報が平等に手に入る

テクニカル分析で使用するのは、分析対象の過去の値動きです。

この情報は誰でも平等に入手することができるため、保険会社・銀行・年金基金・証券会社・投資ファンドなど、組織で投資を行う機関投資家(プロ)と個人投資家の間で、情報格差が生まれることは基本的にありません。

そのため、テクニカル分析の世界では、誰でも同じ土俵で勝負することができます

初心者でも比較的分析がしやすい

テクニカル分析では、分析対象が過去の値動きだけと限定されています。1つのことに集中できるので、比較的分析がしやすいところがあります。

また、過去の値動きはチャートという形で視覚化されており、直感的に理解しやすい側面もあります。

もちろんテクニカル分析は非常に奥が深いのですが、初心者の人でも始めやすい分析方法だと言っていいでしょう。

短期的な変動についても分析できる

相場における短期的な動きは、しかるべき理由に基づいているというよりも、単に市場における需給バランスによる部分が大きいと言えます。

この点、テクニカル分析はあくまで値動きに基づいて動いているため、値動きの原因が何であっても問題なく分析を行うことが可能です。

このように、相場の短期的な変動についても分析ができることから、スキャルピングやデイトレードにおいて、テクニカル分析は非常に有用なところがあります。

具体的なトレードポイントが分かる

テクニカル分析では、インジケーターなどが特定の条件を満たしたことを売買シグナルとみなします。

そのため、どこでトレードを行えばいいかの判断基準が明確なので、非常に分かりやすいところがあります。

このように、テクニカル分析はトレードに直接活かせる非常に実戦的な分析方法と言えるでしょう。

テクニカル分析のデメリット

続いて、テクニカル分析のデメリットも挙げておきましょう。

デメリット
ダマシを完全には避けられない 過去の傾向が将来も続くとは限らない 想定外の事象には対応できない

こちらについても、それぞれ理由ととも解説していきます。

ダマシを完全には避けられない

テクニカル分析は、過去の値動きから「この条件を満たしたらこう動くことが多い」という傾向をもとにトレードを行います。

しかし、あくまでも「こう動くことが多い」というレベルであり、「絶対にこう動く」というものはありません。(当然と言えば当然のことですが。)

そのため、想定外の動きをするダマシは完全に避けることはできず、一定の割合で負けトレードが発生することは、しっかり認識しておく必要があります。

過去の傾向が将来も続くとは限らない

テクニカル分析では、価格などについて過去の推移から将来の方向や水準の分析を行います。

しかし、その把握した傾向はあくまで過去の値動きに見られるものであり、将来も同様の傾向が続くことは保証されません。

つまり、ある傾向を利用した特定の手法が過去は有効であったとしても、それが将来も有効であり続けるとは限らないわけです。

想定外の事象には対応できない

テクニカル分析は、過去の傾向に基づいて分析を行います。

そのため、突発的に発生した想定外の事象などにより、過去の傾向とかけ離れた動きになった状況には、適切に対応することができません。

こういった事象によりポジションと逆行した展開になった場合には、速やかに撤退の決断をする必要があるでしょう。

ファンダメンタルズ分析

続いて、ファンダメンタルズ分析についても、詳細に解説をしていきます。

ファンダメンタルズ分析の考え方

ファンダメンタルズ(fundamentals)とは、「経済の基礎的諸条件」と訳される言葉です。つまり、分析対象に関連する基礎情報と考えるといいでしょう。

ファンダメンタルズ分析では、この関連する基礎情報に基づいて分析対象のあるべき価値を把握していきます。

その上で、分析対象の価格はいずれはあるべき価値になるという前提に立って、現在価格とあるべき価値のズレから、今後の相場の方向性を予測していくのが基本です。

また、市場参加者が持つ「こうなるだろう」という期待や注目を集めている市場テーマなどによっても、相場は動されていきます。

ファンダメンタルズ分析では、こういった市場の期待や話題性も含めて情報を集めて分析を行うことも大切です。

さまざまな情報を収集してあるべき価値を算出するには、幅広い情報力と深い専門知識が必要となり、決して簡単なことではありません。

しかし、もしあるべき価値を正確に把握できれば、長期的な相場の方向性を高い精度で予測できると考えられます。

分析対象別の分析方法

ファンダメンタルズ分析はあるべき価値を算出していきますが、分析対象によって関連する基礎情報は違いますし、分析方法も変わってきます。

ここでは、為替相場(FX)と株式相場を例にして、ファンダメンタルズ分析のイメージを簡単に紹介していきます。

為替相場(FX)におけるファンダメンタルズ分析

そもそも為替とは、2つの通貨間における価値のバランスを示した比率です。

例えば、「米ドル/円=100」であれば、1米ドルの価値は1円の100倍(1米ドル=100円)ということになります。

そのため、為替の長期的な目標値を見極めるには、2つの通貨のあるべき価値を把握する必要があることを、まずは頭に入れておきましょう

この通貨の価値は、その国の政治や経済の状況をはじめとして非常に幅広い要素の影響を受けます。

ここでは、経済の状況を把握するために意識しておく主要な指標をいくつか挙げておきます。

主要な経済指標
雇用統計 国内総生産(GDP) 消費者物価指数(CPI) 貿易収支 小売売上高 住宅着工件数

上記以外にもさまざまな経済指標が定期的に公表されており、これらの値をチェックすることがファンダメンタルズ分析においては欠かせません。

これらの値をチェックしながら、経済状況が上向けばその国の通貨は強くなると考えていくのが基本です。

その上で、景気は過熱したり冷え込んだりを繰り返していくため、これを安定的に拡大させるようにするために行われる政策にも注意が必要です。

  • 中央銀行が行う金融政策
  • 政府が行う財政政策

ここでは、通貨の価値に直接影響を与える中央銀行による金融政策について、簡単に見ておきましょう。

中央銀行は、例えば景気が冷え込んでいる状況(物価は下落)においては、利下げなどの金融を緩和する政策を行って景気を活性化させようとします。

利下げを行えば、その通貨を持つことで得られる利子が減るため、通貨としての価値は下がっていきます。そのため、為替相場も大きな影響を受けることになります。

このように、中央銀行の金融政策によって通貨の価値が決まり、為替のあるべき値も決まる側面があるわけです。

なお、中央銀行は先に紹介した経済指標を見ながら、金融政策を決めていきます。中央銀行の動向を探るという意味でも、経済指標は非常に重要と言えるでしょう。

また、中央銀行の要人が何かを発言するだけで、次の金融政策に対する市場の思惑が交錯して相場が動くこともよくあります。

為替相場のファンダメンタルズ分析においては、こういった形で通貨の価値を左右するニュースを確認しながら、それが相場のどちら方向にどの程度の影響を与えるのか、といったことを見極めていくのが中心となるわけです。

株式相場におけるファンダメンタルズ分析

株式を保有することは、株式会社の一部分を所有することを意味します。

例えば、発行済み株式数が100万株の株式会社の株式を100株購入すれば、その会社の1万分の1を所有するというイメージです。

この場合、その株式100株の価値は、“現在その株式が保有している資産”“将来その株式会社があげる利益”の1万分の1ということになるでしょう。

株式相場のファンダメンタルズ分析では、このような株式の価値を算出するために、以下を含む決算情報を使用するのが基本です。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 業績予想

上場会社は、これらの情報を四半期毎に開示しています。

投資家はこういった情報を使いながら、会社の財政状態や今後の経営成績の見込み、株価の割安感などを分析していくことになります。

ここでは、分析において使用される基本的な指標をいくつか紹介しておきましょう。

主要な財務指標・株価指標
流動比率 自己資本比率 自己資本利益率(ROE) 1株当たりの当期純利益(EPS) 株価収益率(PER) 株価純資産倍率(PBR) 理論株価

こういった指標は非常に種類が多く、さまざまなアプローチによって株式相場のファンダメンタルズ分析は行われているわけです。

この記事では細かいところまでは説明できませんが、より詳しく知りたいという人は、以下の記事も参考にしていただければと思います。

ファンダメンタルズ分析のメリット・デメリット

それでは、ファンダメンタルズ分析のメリットとデメリットについても整理しておきましょう。

ファンダメンタルズ分析のメリット

ファンダメンタルズのメリットには、以下のような点が挙げられます。

メリット
長期的な方向性を高い精度で把握できる 大きなトレンドの根拠を理解できる 重要イベントの発生タイミングが分かることがある

上記のそれぞれについて、理由とともに説明していきます。

長期的な方向性を高い精度で把握できる

ファンダメンタルズ分析では、分析対象のあるべき価値を把握することができます。

分析が正確であることが前提ですが、あるべき価値と乖離した価格になっている分析対象があれば、いずれは適正価格に戻るのは当然と言えるでしょう。

もちろん短期的に逆行する可能性はありますが、長期的に見てどういう方向性で相場が動くかの予測は、高い精度が期待できるわけです。

大きなトレンドの理由を理解できる

相場において大きなトレンドが発生する際には、分析対象の価値が変わる事象が発生していることがあります。

ファンダメンタルズ分析を行っている場合、この価値変動の要因となる事象を把握すれば、そのトレンドを予測できるわけです。

これによって、事象の発生とともにいち早くトレンドに乗れることもあるでしょう。

重要イベントの発生タイミングが分かることがある

ファンダメンタルズ分析では、正しい情報を素早く仕入れることが非常に重要です。

そのため、必然的に関連する情報がいつ発表されるか、どういうスケジュールでイベントが発生する可能性があるか、といったことに敏感になっていきます。

つまり、相場の起点になりうるようなイベントのタイミングを、あらかじめ認識できるケースもあるわけです。

ファンダメンタルズ分析のデメリット

続いて、ファンダメンタルズ分析のデメリットです。

デメリット
機関投資家と個人投資家の情報格差が大きい 短期的な変動への対応が難しい 適正価格に到達する前に状況が変わる可能性がある

では、それぞれ見ていきましょう。

機関投資家と個人投資家の情報格差が大きい

ファンダメンタルズ分析では、関連する基礎情報に基づいて深い分析を行うことになります。

この点、機関投資家の場合、そういった情報を素早く入手できるような体制ができており、かつ、専門知識を持った担当者が深い分析を行えるようになっています。

こういったことは個人投資家が実践するのは困難なため、情報力と分析力において、個人投資家は不利というのが現実と言わざるを得ないでしょう。

短期的な変動への対応が難しい

ファンダメンタルズ分析を正確に行えば、長期的な目標価格については高い精度で予測することが可能です。

ただし、相場はその目標価格に向かって一方通行で推移するわけではなく、その時々の市場の需給によって上下動を繰り返しながら推移していきます。

この点、テクニカル分析であれば、分析する時間足を変えることで短期的な上下動にも対応することができます。

しかし、ファンダメンタルズ分析には、テクニカル分析のように時間軸を変えた分析ができないため、短期的な変動に対応するのが難しいわけです。

市場参加者の心理状況によっては相場が行き過ぎることも多く、時には目標価格と逆方向に極端に振れてしまうこともあります。

ファンダメンタルズ分析で仮に正しい目標価格を予測できたとしても、こういった相場の短期的な変動に巻き込まれてトレードに負ける可能性があることは、頭に入れておいた方がいいでしょう。

適正価格に到達する前に状況が変わる可能性がある

ファンダメンタルズ分析では、長期的に到達するであろう適正価格に基づいた予測を行います。

しかし、分析が正確であったとしても、価格が適正値に修正されるまでに時間がかかることがあるため、その間にそもそもの前提条件(関連する基礎情報)が変わる可能性があります。

この場合、前提条件が変われば適正価格も変わるため、結果的には最初の予測は正しくなかったことになります。

ファンダメンタルズ分析を使う際にはこういった可能性も考慮して、状況が変わったときには素早く対応する必要があるでしょう。

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テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の比較

テクニカル分析は値動きに見られる特徴に注目するのに対し、ファンダメンタルズ分析は分析対象の価値に注目します。

このように、両者は将来の相場展開を予測するという目的は同じですが、アプローチが全く異なるわけです。

これを踏まえて、頭に入れておくべき両者の重要な違いをまとめておきます。

テクニカル分析の方が始めやすい

まず最初に、ファンダメンタルズ分析の方がテクニカル分析よりも、個人投資家にとっては難易度が高いところがあることが挙げられます。

ファンダメンタルズ分析は、さまざまな関連情報を集めて専門知識に基づいて分析を行うことになります。

しかし、個人投資家の情報力は限られていますし、理論的に分析対象の価値を算出する専門知識を持っている人はほとんどいないでしょう。ましてや、仮に価値を算出できたとしても、相場で必ず勝てるとは限りません。

そのため、個人投資家がファンダメンタルズ分析だけで勝負するのは無理がある、と言わざるを得ないというわけです。

一方、テクニカル分析では、過去の値動きという限られた情報に集中して分析することになります。

誰でもチャートを見ればこの過去の値動きという情報は手に入れられるため、情報力の面で不利になることはありません。

また、分析力の面でも、テクニカル分析で使うインジケーターは一般的な使い方が決まっており、それをきちんと学習すれば、比較的すぐに手法を実践することができます。

もちろんテクニカル分析は奥が深く、計算式まで理解し完全に使いこなすとなると容易ではありません。

精度の高い予測が行えるようになるには、手法を学んだ上で、自分自身でバックテストなどを行い研究することが必要ではあります。

とはいえ、実践がしやすく機関投資家と同じ土俵で戦えるテクニカル分析は、個人投資家にとっては欠かせない武器と言ってもいいでしょう。

短期的な動きにはテクニカル分析が欠かせない

ファンダメンタルズ分析で分析対象の価値を正確に算出できれば、長期的には精度の高い予測を期待することが可能です。

しかしながら、短期的な予測を行おうとする場合、相場変動が日々の需給バランスによる部分が大きいため、ファンダメンタルズ分析では対応が難しいところがあります。

ファンダメンタルズ分析からは、月例で発表される経済指標や四半期毎に発表される決算情報などの基礎情報から、その状況における目標値は割り出すことができるかもしれません。

しかし、あくまで分かるのは目標値だけであり、日々の値動きなど、そこに至るまでにどう推移するかは分析の対象外だからです。

この点、値動きに注目して分析を行うテクニカル分析は、短期的な予測でも十分に対応することができます。

そのため、短期的な目線でトレードを行う場合には、ファンダメンタルズ分析よりもテクニカル分析を重視した方がいいでしょう。

なお、長期分析に関しても、短期分析と同じようにテクニカル分析は対応することができます。

しかし、テクニカル分析では、予測と逆方向に相場が動いてしまう「ダマシ」と呼ばれる現象が、一定の確率で必ず発生します。

このことを踏まえると、長期分析に関しては、あるべき価値が把握できるファンダメンタル分析の方に軍配が上がるところがあるかもしれません。

両者の特徴を活かす一つの方法として、ファンダメンタルズ分析で長期的な流れを読みながら、短期的にはテクニカル分析を行い目先のエントリーポイントを探るという形も考えられそうです。

ファンダメンタルズ分析からヒントを得られることもある

ここまで個人投資家にとっては、テクニカル分析の方が向いているという説明をしてきましたが、個人投資家がファンダメンタル分析をどのように活かすことができるかについて説明します。

それは、テクニカル分析だけでは得られない情報が、ファンダメンタルズ分析から得られることがあるという点です。

例えば、テクニカル分析は過去の値動きだけが分析対象ですが、ファンダメンタル分析ではいつ重要な発表が行われるといった、将来の事象の発生タイミングを把握できます。

将来起こる指標発表や決算のタイミングを過去の値動きから予測するのは、まず無理でしょう。

仮にそれが非常に重要な事象であれば、市場においてその発生タイミングに向かって期待感が膨らみ、相場が一方向に向かっていくということもあるでしょう。

また、実際にその重要な事象を通過する際には、その結果を見てさまざまな思惑が交錯していったん相場が荒れることになります。そして、徐々に市場の解釈が定まり相場が落ち着いていき、再び新しい相場が始まっていきます。

米国の大統領選挙や雇用統計などをイメージすると分かりやすいですが、結果が出るまでの間や出た直後は、相場は荒れて不規則な動きになりやすいところがあります。

ファンダメンタルズ分析でこういった相場が不規則に荒れる要因を把握していれば、テクニカル分析での予測が難しい局面でのトレードを避けることができます。

つまり、「大統領選挙があるからポジションを取るのを控えよう」「雇用統計があるからポジションを軽くしておこう」といった判断ができるようになるわけです。

こういった形で、ファンダメンタルズ分析を取り入れていれば、相場がトレードに適しているかどうかについての先読みや現状把握ができるようになり、特にリスク回避という意味で大きなメリットがあると言えるでしょう。

確かに個人投資家がファンダメンタル分析だけで勝負するのは難しいですが、ファンダメンタルズ分析からヒントを得られることもあるということは、しっかり頭に入れておくことをおすすめします。

個人投資家はテクニカル分析が基本

テクニカル分析とファンダメンタルズ分析を比較をしましたが、結論は基本的には個人投資家が重視すべきなのはテクニカル分析ということになります。

なぜなら、ファンダメンタルズ分析を行うのには高いレベルでの情報力、分析力、マンパワーが必要になるからです。

個人投資家が入手できる限られた情報を使って、限られた知識の中でファンダメンタルズ分析を行っても精度の高い予測は難しく、精度の高い予測ができる機関投資家と対等に戦うことはできません。

一方、過去のチャート情報だけで分析できるテクニカル分析は機関投資家との情報格差が少なく、対等に戦っていくことも十分に可能です。

ただし、注意しておきたいのは、ファンダメンタルズ分析が不要というわけではないという点です。

ファンダメンタル分析だけで勝負するのは難しいですが、個人投資家が最低限のファンダメンタルズ分析の知識を身に付けておくことが、相場予測にプラスに働くことは大いにあるからです。

テクニカル分析との比較のところでも触れましたが、ファンダメンタル分析からでしか得られないヒントもあります。

以上を踏まえると、個人投資家がトレードを行う際にはテクニカル分析を基本としつつ、ファンダメンタル分析も適宜取り入れていくというのが、理想的な形と言えるでしょう。

ファンダメンタルズ分析を取り入れる方法

個人投資家もファンダメンタルズ分析を取り入れるべき、という話をしました。

では、どういった形でファンダメンタルズ分析を取り入れていけばいいのか、具体的なやり方についてもいくつか紹介しておきましょう。

ファンダメンタルズ分析で大きな流れを理解する根拠として使う

個人投資家が行うファンダメンタルズ分析では、精度の高い予測は難しいところがあります。

しかしながら、大きなトレンドが発生するような場合には明確な事象が原因となっている場合も多く、個人投資家でもファンダメンタルズ的に根拠を把握することが十分可能です。

もちろんターゲット価格を正確に予測するのは難しいですが、「こういう理由で強いトレンドが発生している」ということは認識できるわけです。

これを認識するだけで、トレードは確実に有利に進めることが可能となります。

アベノミクスにおける米ドル/円の上昇相場(円安)

上の画像は、米ドル/円の週足チャートです。

これを見てみると大幅に円安方向へ進んだことが分かりますが、この背景には日銀による過去にない規模の金融緩和政策がありました。

このことを踏まえると、どこまで円安が続くかを正確に見極めるのは難しいですが、少なくとも円安トレンドがしばらく続くことを予測するのは可能だったと言えるでしょう。

ブレクジットによるポンド/米ドルの下落相場(ポンド安)

また、上の画像はポンド/米ドルの週足チャートです。

これを見てみると大幅にポンド安方向へ進んだことが分かりますが、この背景には英国のEU離脱(ブレグジット)が現実になったことが背景にありました。

こちらも先ほどの米ドル/円と同様に、あらかじめ予測できない動きではなかったと考えられます。

このような形で、大きなトレンドが発生した際に、ファンダメンタル分析によって根拠が把握することができれば、トレードにおける大きな助けになることがあるわけです。

分析対象のファンダメンタルズに関する最低限の知識を身に付けた上で、日々のニュースチェックを行うようにするといいでしょう。

ファンダメンタルズ分析で市場のテーマを認識する

相場というものは、市場参加者が行う売買によって動いていきます。そのため、相場展開を予測する上で、市場参加者の考え方や心理状況が非常に大切です。

この点、ファンダメンタル分析によって分析対象を取り巻く環境を理解していると、市場参加者が何に注目しているかが見えてくることがあります。

例えば、金融政策決定会合が近づいていて、強い金融緩和策が発表される可能性が高いと見られている状況を考えてみてください。

そうすると、金融政策が発表される日まで、その国の通貨が下落することを市場参加者は警戒して、相場もそういったトレンドが現れやすくなるでしょう。

そして、実際にその日が来たときに仮に市場の期待を裏切る結果になったとすると、それまでのトレンドを巻き戻す動きが起こるはずです。

また、金融政策の発表前に大きくトレンドが進行してしまっていて、市場においてすでに織り込む済みとなっているようなケースもあります。

この場合、仮に市場の期待通りの結果となったとしても、「材料出尽くし」となってそれまでのトレンドが反転することになります。

これは、発表前にその通貨を売っていた市場参加者が、利益確定のために通貨を買い戻す動きにで出ることが原因です。

こういった形で重要イベントを節目として市場におけるテーマを認識すると、市場参加者が何を考えてどう行動しているかが見えてきて、相場展開が読みやすくなります。

ファンダメンタルズ分析的な目線を持つことによって、テクニカル分析だけでは判別できないトレードポイントが見えてくることがあるかもしれません。

ポイント

FXでは、少なくとも関連する国の金融政策発表、それに大きな影響を与える雇用統計などの重要な経済指標は必ず意識しておくようにしましょう。

ファンダメンタルズ分析ありきの売買判断はしない

最後に、ファンダメンタルズ分析を取り入れる上での注意点にも触れておきます。

それは、ファンダメンタルズ分析をするのであれば、テクニカル分析も含めて判断をする方が懸命だということです。

ファンダメンタルズ分析からヒントを得るのはいいですが、トレードの判断はあくまでもテクニカル分析に基づいて行うようにしましょう。

例えば先ほどの金融政策決定会合の話では、「強い金融緩和の発表は確実なんだから、発表前までは絶対にトレンドが発生するに決まっている」と決めてかかってトレードを行うのは危険です。

そうではなくて、テクニカル分析をしてトレンドの発生を確認してから、「これは強い金融緩和が発表されていると市場参加者が見ているんだな」と納得する、といった形が望ましいということです。

自分が行ったファンダメンタルズ分析ありきで相場を見てしまうと、その相場観からなかなか抜け出すことができなくなります。

ファンダメンタルズ分析では機関投資家に敵わないことを考えると、個人投資家のファンダメンタルズ分析による相場観に縛られて行うトレードでは、良い成績は期待できないでしょう。

ファンダメンタルズ分析を絶対視することなく、テクニカル分析を補助する形でできるだけ柔軟に取り入れることをおすすめします。

豆知識

機関投資家と個人投資家の間には、大きな情報格差があるという話をしました。

例えば、機関投資家はブルームバーグターミナルと呼ばれるプロ向けのサービスを利用しており、良質な情報を素早く手に入れる環境が整っています。

こういったものを利用するのが難しい個人投資家は、何かの情報を素早く手に入れることで、他の市場参加者を先回りして動くといったことは現実的ではないわけです。

近年では個人投資家の情報環境も良くなっており、例えば、経済指標の結果であっても、発表後1分とかからずにチェックできるようになりました。

とはいえ、必ず情報を入手する前に相場における初動は始まっており、先回りすることはほとんど不可能でしょう。

また、突然理由もなく相場が動き出したので「なぜだろう?」と思っていると、その動きが落ち着いてからようやく要人発言のニュースが流れてくるといったこともあります。

このように、個人投資家が情報の早さで勝つことはできないので、相場に発生した動きに後から対応するというスタンスを取ることになるわけです。

用語

  • テクニカル分析
  • ファンダメンタルズ分析
  • チャート
  • ローソク足
  • インジケーター
  • テクニカル指標
  • ダウ理論
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Runchaテクニカル分析チーム
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日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト|4大監査法人出身者|TradingViewインジケーター開発者|EA開発者|

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監修者
山中康司

有限会社アセンダント

学歴: 慶應義塾大学卒業

著書: 『FXチャート分析マスターブック FX ボリンジャーバンド常勝のワザ』(2013年12月)

来歴: アメリカ銀行バイスプレジデント → 日興シティ信託銀行為替資金部次長を歴任。・金融コンサルティング会社アセンダント設立。金融リテラシー協会代表理事を務める。



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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
山中 康司 金融リテラシー協会 代表理事
アセンダント取締役
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