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デューデリジェンス費用負担の相場とは?会計処理や税務処理もあわせて解説

2024年02月20日 公開 
2024年03月05日 更新
デューデリジェンス費用負担の相場とは?会計処理や税務処理もあわせて解説
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M&Aは、事業承継や新規事業への参入、既存事業の強化などを通じて企業競争力を高めていく重要な施策のひとつです。そのM&Aプロセスにおいて欠かせないのが、デューデリジェンスです。

デューデリジェンスでは、買収する企業やその事業に関する詳細な調査・分析が行われ、買収リスクを最小限に抑えながら価値を最大化するための情報が収集されます。

しかし、デューデリジェンスを行うためには、その費用を負担しなければなりません。

「デューデリジェンス費用はM&Aのための初期投資」とはよく言われますが、その相場がどれくらいで、自社に適切な規模はどれくらいかを正しく把握している方はまだまだ少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、デューデリジェンス費用の相場やその負担について分かりやすく整理するとともに、デューデリジェンス費用を支払った場合の会計処理や税務処理の方法などについて解説します。

デューデリジェンスの基本事項の整理

デューデリジェンス費用について述べる前に、「デューデリジェンスとは何なのか」について簡単に整理してみます。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、適切な投資判断を行うために、投資対象のリスクとリターンを把握する目的で行われる事前調査のことです。

M&Aにおいては、譲受希望企業(以下「買い手」)が譲渡希望企業(以下「売り手」)に対して財務面や法務面などを中心にさまざまな角度から精査し、その結果に基づき買収に相応しい企業かどうかなどが判断されます。

デューデリジェンスは、一般的には売り手と買い手の間でM&Aに向けた基本合意が締結された後で、買い手によって実施されます。その期間は対象となる会社の規模などによって異なりますが、おおむね1〜2ヶ月程度で終了します。

デューデリジェンスはなぜ必要か

会社の企業価値は、財務諸表の数字からだけでは正しく判断することができません。なぜなら会社が持つノウハウや技術力、ブランド価値や企業風土のような企業収益の源泉となる無形資産は、財務諸表には表されていないからです。

また、不良債権や資産の過大評価、訴訟などの法的リスクや税務リスクなども、売り手から買い手に開示された書類だけで正確に判断することはできません。

したがって、企業価値を正しく把握するとともにM&Aの潜在的なリスクを知るためにも、最終契約を締結する前にデューデリジェンスによる精査が必要なのです。

デューデリジェンスの主な種類

デューデリジェンスには、調査対象となる売り手の規模や業種、個別の事情などに応じた様々な種類があります。ここでは、代表的なものを簡単に紹介します。

  • 財務デューデリジェンス……資産の実態調査や収益力、簿外債務の有無などを調査します
  • 税務デューデリジェンス……過去の税務申告や納付状況などを確認し、買収後の税務リスクなどを調査します
  • 法務デューデリジェンス……許認可に関する資料の確認や訴訟に関するリスクなどを調査します

これら以外にも、状況に応じて事業(ビジネス)デューデリジェンスや人事デューデリジェンスなどが行われます。

なお、こうしたデューデリジェンスには高度な専門知識が必要となる場合が多いため、一般的には公認会計士や税理士・弁護士などの専門家が依頼を受けて行うことになります。

デューデリジェンス費用の負担は誰が?

デューデリジェンスは、基本的に買い手によって売り手に対して行われるものです。したがって、弁護士や公認会計士などの専門家にデューデリジェンスを依頼する費用は、基本的に買い手がすべて負担します。

買い手側は、M&Aの最終契約を締結する前に、できる限りのリスクを調べ尽くしてから買収判断を行わなければなりません。しかし、デューデリジェンスに時間をかけ過ぎてしまっては、成約のチャンスを逃したり、高額な費用を負担することになったりしてしまいます。

したがってデューデリジェンスは、買収規模やシナジーなどを考慮した上で、適正規模で行うことが大切です。

デューデリジェンス費用の相場

デューデリジェンスには、上述のように財務や税務・法務などの基本的なものから、人事デューデリジェンスやITデューデリジェンスのように状況に応じて用いられるものまであります。

この中からどのデューデリジェンスを選び、どれくらい時間を掛けてやるのかによって、デューデリジェンス費用は大幅に変わります。

また、「何をどこまでやるのか」は、買い手がM&Aで何を実現したいのかによっても大きく変わります。たとえば、買収後のシナジー効果や共同開発を検証したいのであれば、事業デューデリジェンスは欠かせないでしょう。

また、売り手が大規模不動産を持っているのであれば、不動産デューデリジェンスは必須と言えます。

このように、デューデリジェンスをどれだけやるのかは状況によってケースバイケースであるため、一律にいくらと述べることはできません。したがってここでは、一般的な目安としてのデューデリジェンス費用の相場を紹介します。

財務デューデリジェンス費用の相場

財務デューデリジェンスは、売り手の持つ資産の実態や収益力、簿外債務の有無やキャッシュフローの状況などを精査し、財務面の健全性や潜在的な財務リスクを検出する目的で行われます。

多くの場合、財務の専門家である公認会計士や税理士によって行われ、1時間当たり2〜5万円程度、1日当たりでは10〜30万円程度が必要となります。

税務デューデリジェンス費用の相場

税務デューデリジェンスでは、売り手の税務関連情報が詳細に調査され、「未納の税金がないか」や「買収後に税務調査で巨額の申告漏れなどが指摘されるリスクはないか」などが精査されます。

こうした作業は一般的に税務の専門家である税理士や公認会計士によって行われ、1時間当たり2〜5万円程度、1日当たりでは10〜30万円程度が必要となります。

法務デューデリジェンス費用の相場

法務デューデリジェンスでは、「買収後に許認可が引き継がれるか」や「訴訟されるリスクが潜在的にあるか」などが中心に調査されます。

法務デューデリジェンスは法務の専門家である弁護士や司法書士によって行われることが一般的で、こちらも1時間当たり2〜5万円程度、1日当たりでは15〜40万円程度が相場となります。

実際にデューデリジェンスが行われる場合には、これら3つのデューデリジェンスを軸に、状況に合わせて他のデューデリジェンスが実施されます。したがって、最終的なデューデリジェンス費用の相場は、おおむね以下のようになります。

企業・事業規模デューデリジェンスの相場
中小企業数十万円~数百万円
大企業もしくは規模の大きな企業数百万円~数千万円

デューデリジェンス費用に関する注意点

デューデリジェンスは規模に合わせた適正なものであることが大切ですが、「どれくらいの規模や費用が適切なのか」をオーナー経営者だけで判断するのは簡単ではありません。

「M&Aの初期投資はできるだけ抑えたい」という感情バイアスが働けば、デューデリジェンスの内容が不足してしまうこともあります。ですがそれでは、希望通りのM&Aを実現するのは難しくなってしまうでしょう。

こうしたことから、「自社にとってデューデリジェンスの規模や費用はどれくらいが適切なのか」や「どういったバランスでデューデリジェンスを行うのが自社にとって最適なのか」については、仲介会社のアドバイザーなどに相談しながら決めていくことをお勧めします。

デューデリジェンス費用の会計処理

2023年1月24日の日経新聞で、ソフトバンクグループがM&Aのデューデリジェンス費用を巡り370億円の申告漏れを国税局から指摘されたことが報道されました。デューデリジェンス費用は高額となる場合が多く、その処理を誤ると後の税務調査で指摘されることも珍しくありません。

そこでまず、デューデリジェンス費用の会計処理について、連結財務諸表と個別財務諸表のそれぞれに分けて解説します。

連結財務諸表の会計処理

親会社・子会社・関係会社などで構成されている企業グループは、グループ全体をひとつの組織とみなして決算が組まれます。その際に作成されるのが、連結財務諸表です。

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」の26項では、連結財務諸表を作成する際のデューデリジェンス費用の会計処理を、以下のように定めています。

取得関連費用(外部のアドバイザーなどに支払った特定の報酬・手数料など)は、発生した事業年度の費用として処理する。

したがって連結財務諸表では、デューデリジェンス費用を発生した事業年度に会計上の費用として処理を行います。

個別財務諸表の会計処理

個別財務諸表とは、1つの企業について作成される財務諸表のことです。子会社などを持たない中小企業の大半も、この個別財務諸表を作成しています。

また、連結財務諸表を作成するような企業グループ内でも、企業ごとに個別財務諸表が作成されています。

「金融商品会計に関する実務指針」第56項では、個別財務諸表を作成する際のデューデリジェンス費用の会計処理を、以下のように定めています。

金融資産(デリバティブを除く。)の取得時における付随費用(支払手数料など)は、取得した金融資産の取得価額に含める。ただし、経常的に発生する費用で、個々の金融資産との対応関係が明確でない付随費用は、取得価額に含めないことができる。 期末又は保有目的区分を変更する時点で保有している金融資産を時価評価する場合、その時価には取得又は売却に要する付随費用を含めない。

したがって個別財務諸表では、デューデリジェンス費用をM&Aで取得した株式の取得原価に含め資産の一部として計上するように処理を行います。

デューデリジェンス費用の税務上の取り扱い

次に、前章で述べたデューデリジェンス費用の会計処理とは別に、税務上はどのように扱うのかについて解説します。

法人税法における取得価額の範囲

法人税法では、株式などの有価証券を取得する際に要した購入手数料などの費用は株式の取得価額に含めるように定めています(法人税法施行令第119条第1項第1号)。したがって、M&Aによって売り手の株式を取得した際に支払ったデューデリジェンス費用は、原則として取得価額に含まれることになります。

しかし、デューデリジェンスを行った結果M&Aが不成立となるケースもあることなどから、実務的には過去の判例をもとに以下のように考えられています。

  • 当該有価証券を取得することを決定した時点以前の調査費用・・・損金算入
  • 当該有価証券を取得することを決定した時点以降の調査費用・・・取得価額に含む

これらをまとめると、以下のようになります。

デューデリジェンス費用の種類税務上の取り扱い
株式取得を決定する以前のプレデューデリジェンス費用損金算入
基本合意後に行われるデューデリジェンス費用有価証券の取得価額に含む
基本合意後に行ったもののM&Aが不成立に終わった場合のデューデリジェンス費用損金算入

ただし、実際にいつの時点で取得の意思決定を行ったのかや、どのような目的でデューデリジェンスを行ったのかについては、ケースごとに大きく異なります。

したがって、個別の状況に照らし合わせた上で、どのような税務処理を行うのかを検討しなければなりません。

さらに株式取得の意思がどのような経緯によって行われ、デューデリジェンス費用はどのような目的で行われたのかを客観的に証明できるような資料も作成しておくと良いでしょう。

また、このような高度な税務判断を社内の関係者だけで行うのは難しいため、公認会計士や税理士のような税務の専門家に最終的な判断を委ねた方が良いでしょう。

まとめ

M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスは欠かせません。しかし、適正規模でデューデリジェンスを行うのは簡単ではありません。

不足していればリスクが検出できませんし、過剰であれば時間や費用がかさみ、M&A後のシナジーにも影響を与えてしまいます。

本記事ではデューデリジェンス費用のおおまかな相場を紹介していますので、それらを参考に仲介会社などに相談すれば、適正規模なデューデリジェンスが受けられるでしょう。

また、デューデリジェンス費用をめぐる会計処理や税務処理に関しては、高度な専門知識が必要となる場合が多いため、公認会計士や税理士などの専門家に相談しながら判断することをお勧めします。

著者
Runchaテクニカル分析チーム
チーム紹介ページ

日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト|4大監査法人出身者|TradingViewインジケーター開発者|EA開発者|

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監修者
山中康司

有限会社アセンダント

学歴: 慶應義塾大学卒業

著書: 『FXチャート分析マスターブック FX ボリンジャーバンド常勝のワザ』(2013年12月)

来歴: アメリカ銀行バイスプレジデント → 日興シティ信託銀行為替資金部次長を歴任。・金融コンサルティング会社アセンダント設立。金融リテラシー協会代表理事を務める。



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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
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